タイトル | 再生藻場でイセエビ保育機能を確認 |
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担当機関 | (国)水産総合研究センター 西海区水産研究所 |
研究期間 | 2010~2014 |
研究担当者 |
吉村 拓 清本節夫 門田 立 八谷光介 |
発行年度 | 2015 |
要約 | 大分県名護屋湾ではウニ類除去を主とする漁業者らの継続的な磯焼け対策によって四季藻場(クロメ場)が再生した。藻場を成育場として利用するイセエビを対象に、磯焼け期を含む2010~2014年において稚イセエビの生息状況を調査した結果、藻場の再生とともに稚エビの生息密度が上昇している傾向を把握し、再生藻場が稚イセエビに対する保育機能を発揮したと考えられた。 |
背景・ねらい | 全国的に深刻な磯焼け問題を背景に、水産庁事業等によって少なくとも200近くの漁業者グループが磯焼け対策に取り組む時代を迎えている。成功事例が増えつつあるが、再生された藻場が水産業にどのような効果や役割を果たしているかについての評価は遅れており、様々な資源生物を対象にその効果評価が求められている。そこで、再生藻場のイセエビ涵養効果を評価するための調査を行った。 |
成果の内容・特徴 | 大分県佐伯市名護屋湾葛原地先の水深12m以浅の岩礁帯において、2010~2014年の期間(主に9月と11月)に、イセエビの探索と海藻の生育状況を調査した。当地では漁業者らによってウニ類の除去が継続されており、2013年からクロメ場が再生し始めた。 ・磯焼けが顕著であった2010~2012年には、ポストラーバや底生生活初期の稚エビは観察されなかった(図1)。 ・この間、ノコギリモクを移植した稚エビ礁にはポストラーバや稚エビが生息したことから、当水域にはイセエビポストラーバが来遊していることが確認された。 ・2013年からクロメが広がり始め(図2)、同時に稚エビが観察されるようになった(図3)。この傾向は翌年さらに顕著となり、2年間に渡って稚エビ密度の上昇傾向が把握された(図4)。 ・数キロ離れた地先にはクロメ場がずっと維持されており、そこでの調査結果と比較すると、再生藻場の稚エビ密度は約1/3と推定された。 |
成果の活用面・留意点 | 名護屋湾では磯焼け以前におけるイセエビ生息状況が不明なため、機能が”回復した”との表現は避けている。なお、一般的な稚エビ生息環境に該当しない潮間帯や潮下帯上部のごく浅所、また表面に孔の少ない硬い海底基質の上に再生された藻場では、イセエビ涵養効果は低いと考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=5221&YEAR=2015 |