トマト葉かび病菌の国内レース分布

タイトル トマト葉かび病菌の国内レース分布
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2009~2014
研究担当者 飯田祐一郎
窪田昌春
塩谷純一朗
池田健太郎
岩館康哉
森島正二
発行年度 2015
要約 全国から収集したトマト葉かび病菌は、新たなレースを含む12種類のレースに分化しており、そのうち5種類のレースは海外でも報告のない日本特有のレースである。これら多様なレースの全てに対して抵抗性を示すトマト品種は市販されていない。
キーワード トマト葉かび病、レース分化、Cf抵抗性品種、Passalora fulva
背景・ねらい トマト葉かび病菌(Passalora fulva)はトマトのみに感染する病原菌であり、葉に生じる黄化症状によって生育不良を引き起こす。抵抗性品種に依存した防除体系や減農薬栽培、微生物農薬の普及によって、これまでは潜在的に抑制されていた本病害が顕在化した。2000年代になって新しい抵抗性遺伝子を持つ品種が市販されたが、近年それらトマト葉かび病抵抗性品種にも本病害が発生したことから、新たな寄生性系統(レース)の発生の疑いが持たれている。そこで全国から収集した罹病葉から本病原菌株を分離し、抵抗性品種への接種検定によってレースを決定するとともに、全国のレース分布を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. これまで国内では6種類のレースが同定されていたが、新たに6種類のレース(9、2.9、4.9、2.5.9、4.5.9、4.9.11)を発見し、トマト葉かび病菌は国内で12種類のレースに多様化している(表1)。
  2. これまでに抵抗性遺伝子Cf-2またはCf-4を持つ品種に感染するレースが、全国に分布していることが明らかにされていた。今回の調査で発見された新たなレースは、Cf-5およびCf-9を持つトマト品種に感染する。
  3. レース2.9のように新たなレースが隣接しない地域にも同時期に発生する。
  4. これまでのレースの発生報告から、トマト葉かび病菌の国内レース分布を図1に示す。既知の6種類のレースは全国で検出されたが、新たに検出されたレースの6種類は限られた地域に分布している。白抜きで示した9府県は、レース分布の調査を行っていない(図1)。
  5. 国内で検出された12レースのうち、レース9、2.9、4.9、4.5.9、4.9.11は海外で報告のない日本特有のレースである。
  6. Cf-5Cf-9を持つ品種を導入した地域で、新しいレースが発生していることから、抵抗性品種の画一的な栽培による選択圧が局地的な新レースの増殖を招き、定着するものと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. トマトの栽培地域で発生しているレースに抵抗性を示すトマト品種を選定できる。しかしながら、レース未発生地域でも抵抗性品種のみに依存した防除体系は十分な注意が必要である。
  2. 全てのレースに対して抵抗性を示すトマト品種は市販されていない。
  3. 海外で報告のない新たなレースが多数検出されたことから、日本国内でレース分化した可能性が高い。
図表1 237679-1.gif
図表2 237679-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2015/vegetea15_s17.html
カテゴリ 病害虫 黄化症状 抵抗性 抵抗性遺伝子 抵抗性品種 トマト 農薬 品種 防除

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