タイトル |
ビタミンA制限は黒毛和種去勢牛の血漿中グレリン濃度を低下させる |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2004~2015 |
研究担当者 |
林征幸
木戸恭子
甫立京子
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発行年度 |
2015 |
要約 |
長期間のビタミンA給与制限を受けた黒毛和種去勢肥育牛においては、飼料摂取量が減少すると同時に、血漿中ビタミンAおよびグレリン濃度が低下する。
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キーワード |
グレリン、ビタミンA給与制限、肥育牛、黒毛和種
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背景・ねらい |
黒毛和種などの肥育牛においては脂肪交雑改善を目的としたビタミンA給与制限が行われているが、血漿中ビタミンA濃度が低下しすぎると飼料摂取量が減少する事が知られている。しかしながら、その際の生理学的機構は明らかではない。採食行動に影響を与えるホルモンとして胃(反芻動物では第四胃)から分泌され採食行動を促進するグレリンなどが知られているが、これらとビタミンAとの関係は未だ検討されていない。そこで本研究は黒毛和種去勢牛へのビタミンA給与制限が血漿中グレリン濃度に与える影響を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 黒毛和種去勢牛(平均約13.8ヶ月齢、n=8)を58週間肥育する。試験期間はステージ1(平均20.3ヶ月齢まで)、2(平均24.0ヶ月齢まで)、3(平均26.7ヶ月齢まで)に区切る。試験牛は3区に群分けする:S区(n=2、 ビタミンAを要求量の100%給与)、R区(n=3、ビタミンA血中濃度が30 IU/dL程度になるようビタミンA給与を制限)、およびRS区(n=3、ステージ1および2はビタミンA給与をR区と同様に制限、ステージ3はS区と同等の給与)。4週ごとに採血を行い血漿中ビタミンA及びグレリン濃度を測定する。
- S区は試験期間を通じて高い血漿中ビタミンA濃度であるのに対して、R区の血漿中ビタミンA濃度は低下する。RS区はステージ2までは濃度が低下するが、ステージ3ではステージ1と同程度まで上昇する(図1)。
- S区の代謝エネルギー摂取量は試験期間を通じて同程度であるのに対し、R区ではステージ2および3で減少する。RS区ではステージ2では減少するが、ステージ3ではステージ1と同程度まで上昇する(図2)。
- S区の血漿中グレリン濃度は試験期間を通じて同程度であるのに対し、R区ではステージ3で、RS区ではステージ2で低下する。RS区では、ステージ2よりもステージ3において高いグレリン濃度を示す(図3)。
- これらの結果から、黒毛和種去勢牛に対する長期のビタミンA給与制限は血漿中ビタミンA濃度、代謝エネルギー摂取量およびグレリン濃度を減少させると考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- ビタミンA給与制限が黒毛和種去勢肥育牛の血漿中グレリン濃度を低下させることを示唆する初めての知見であり、反芻動物におけるグレリンの生理作用についての基礎的知見である。
- ビタミンA給与を制限されたウシにおける飼料摂取量の減少と血中グレリン濃度の低下には関係がある可能性がある。
- ビタミンA給与制限が血漿中グレリン濃度を低下させる生理学的機構は明らかではない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s22.html
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カテゴリ |
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