タイトル |
ニワトリ胚はマウスES細胞のテラトーマ形成試験に利用できる |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2013~2015 |
研究担当者 |
原口清輝
松原悠子
細江実佐
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発行年度 |
2015 |
要約 |
ニワトリ初期胚にマウスES細胞を注入して孵化直前まで培養すると、卵黄嚢や脳に効率よく三胚葉性のテラトーマが形成される。
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キーワード |
ES細胞、ニワトリ胚、テラトーマ、分化、実験モデル
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背景・ねらい |
ES細胞やiPS細胞における多分化能の検証は、免疫不全マウスを用いたテラトーマ形成試験が国際的な基準(gold standard)となっている。幹細胞が多分化能を保持していれば、免疫不全マウスの皮下や精巣に注入して一定期間を経ると、外胚葉、中胚葉、内胚葉の三胚葉性の組織へと分化する。一方で、コストパフォーマンスや簡便性、特に動物愛護の観点から免疫不全マウス以外のin vivo実験系が求められてきた。ニワトリ胚には免疫応答がほとんど無いため、免疫不全マウスに替わる宿主として利用できる可能性がある。そこで、新たな実験モデルとしてニワトリ胚に着目し、その有用性について検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 蛍光マーカーGFPを発現するマウスES細胞を単一細胞に分散し、15% 血清代替物(KnockOut Serum Replacement: KSR)を添加したハンクス平衡塩溶液に浮遊させる。7,500~30,000個の細胞を、胚盤葉(放卵直後の胚)または周縁静脈内(2日胚)に注入した結果を比較すると、テラトーマ形成率および再現性は周縁静脈内へ注入した場合の方が高い。
- 卵黄嚢に到達したES細胞は、図1に示すとおりニワトリ胚発生に伴って細胞塊の大きさを増し(上段左、中央)、孵卵直前の18日胚では赤黒い細胞塊に豊富な血管の走行を認め免疫不全マウスに形成されるテラトーマによく似た形態を示す(上段中央、右)。組織切片によるヘマトキシリン・エオジン染色では明瞭な三胚様性(外胚葉、中胚葉、内胚葉)のテラトーマを示す(下段)(生存胚に対するテラトーマ形成率:60%)。
- 頭蓋内(脳)に到達したES細胞は、図2に示すとおり白色で柔らかい脳組織様の肉眼所見を示す(上段左)。組織切片によるヘマトキシリン・エオジン染色では三胚様性のテラトーマを示すとともに(上段中央)、脳様組織(神経細胞)像を示す割合が高い(上段右)。図2下段は、ニワトリ脳、マウス脳をコントロールに用いて神経細胞特異的なニューロフィラメント抗体で免疫染色を行ったものである。脳に形成されたテラトーマが神経細胞に分化していることを示す(同:70%)。
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成果の活用面・留意点 |
- ニワトリ胚を宿主に用いた本実験系は、コストパフォーマンスに優れ、かつ簡便な方法である。特にテラトーマ形成過程を直接観察できる利点がある。
- ニワトリ胚の発生期間(培養期間)が約20日であるため、増殖速度の遅いマウス以外の幹細胞等のテラトーマ形成試験については検討を要する。
- ニワトリ胚を宿主に用いる実験モデルとして、テラトーマ形成試験以外にも種々の幹細胞や癌細胞を用いた分化誘導、転移、血管形成試験への応用が考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s15.html
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カテゴリ |
コスト
鶏
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