| タイトル |
我が国ブロイラーおよび採卵鶏の栄養素排せつ量原単位の改定 |
| 担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 |
| 研究期間 |
2014~2016 |
| 研究担当者 |
荻野暁史
長田隆
村上斉
山下恭広
古屋元宏
河原弘文
大窪敬子
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| 発行年度 |
2016 |
| 要約 |
我が国ブロイラーおよび採卵鶏の窒素・リン・カリウム排せつ量原単位を最新のデータに基づき推定したところ、窒素排せつ量原単位は従来のものより29-33%小さく、鶏ふんに由来するN2O排出量の算定値は約60万トン(CO2換算)/年減少する。
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| キーワード |
養鶏、家畜排せつ量原単位、窒素、栄養塩、GHG
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| 背景・ねらい |
家畜ふん尿に含まれる窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)は、作物にとって必須の栄養素であり肥料として有用である一方、特に過剰にある場合には、環境負荷源にもなり得る。家畜が栄養素を1日・1頭あたりでどれだけ排せつするかを表す排せつ量原単位は、地域における栄養素の需給バランスの評価に利用されている。また、特にN排せつ量原単位は、家畜排せつ物処理から発生する強力な温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)排出量の算出にも使用されている重要な値である。しかし、従来の原単位が提案されてから約20年が経過しており、特に鶏において実態との乖離が大きくなってきている。そこで、最新のデータを用いて、改めてブロイラーおよび採卵鶏排せつ量原単位の推定を行う。
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| 成果の内容・特徴 |
- 飼料要求率、卵生産量等の生産性に関わるパラメ-タから摂取飼料および生産物に含まれる栄養素を求め、その差を鶏排せつ量原単位として推定している(図1)。
- 推定された排せつ量原単位は、採卵鶏では窒素は従来の値と比較して33%小さい(表1)。ブロイラーでは、窒素は従来の値と比べ29%小さい。一方、リンとカリウムは従来の値と比較して同等か大きい。
- ブロイラーでは、飼養羽数/出荷羽数比に出荷日齢の短縮を加味して求めた係数0.154を出荷羽数に乗じることで、補正済飼養羽数が得られる。これに改定後の原単位を乗じて窒素排せつ量を算出すると、従来の算出法を用いた場合と比べて46%小さい。
- 改定された窒素排せつ量原単位を用いると、我が国における鶏ふんに由来するN2O排出量の算定値は約60万トン(CO2換算)/年減少する(図2)。
- 鶏ふん由来アンモニア排出量の算出値は36%減少し、畜種別にみると鶏ふん由来のものが約70%を占めると報告されているため、畜産全体のアンモニア排出量も大きく減少する。
- 窒素排せつ量原単位が小さくなっている理由としては、これまでの研究の積み重ねによる育種改良や栄養・飼養管理の改善により鶏において窒素の利用効率が高まっていることが考えられる。例えば、飼料用アミノ酸添加量の増加により飼料中アミノ酸バランスが改善しているため、飼料中粗蛋白質含量は低下している。
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| 成果の活用面・留意点 |
- 普及対象: 農業および環境行政担当者、研究者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 日本国および地方自治体
- その他: 今回改定された窒素排せつ量原単位は、2017年度版の「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」に採用される予定である。今回改定された栄養素排せつ量原単位は、堆肥等家畜ふん尿由来肥料の施肥量の適正化に寄与するとともに、地域における栄養素の需給バランスや国内窒素フローの適正な評価にも貢献する。また、検討が開始されているIPCC温室効果ガスガイドラインの改訂にも寄与する。
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| 研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2016/16_050.html
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| カテゴリ |
肥料
育種
飼育技術
出荷調整
飼料用作物
施肥
鶏
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