ラオスの重要な食用魚パ・コーの生態的情報に基づく資源保全管理

タイトル ラオスの重要な食用魚パ・コーの生態的情報に基づく資源保全管理
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 森岡 伸介
Vongvichith Bounsong
発行年度 2016
要約 西アジアから東南アジア一帯に広く分布し、ラオスにおける重要な食用魚であるタイワンドジョウ科Channa striata(現地名パ・コー)は、近年小型化や資源の減少が危惧されており、資源管理が必要である。本種は体長20 cm以上で性成熟し、4月前後に卵巣が成熟することから、この時期に体長20 cm(2歳)以上の個体を漁獲規制することが資源保全に効果的である。
キーワード ラオス在来魚, 重要魚種, 資源保全管理
背景・ねらい ラオスでは、近年の人口増加に伴い食用魚需要が急速に高まっているとともに、市街区の拡大が原因で、漁業資源の減少や小型化が懸念されている。中でもパ・コー(図1上)は美味であり高価であることから盛んに漁獲されるが、強度の肉食魚で域内の魚類の食物連鎖の中で最上位の種であり、他魚種と比較すると個体数は限定的であることから、資源管理が必要である。魚類の資源管理には親魚(産卵個体群)保護のための漁獲規制が有効であり、そのためには繁殖年齢・繁殖サイズおよび繁殖期の解明が求められる。そこで、ラオス中部のビエンチャン県北部において採集したパ・コー530個体の成魚・未成魚について行った年齢・成長・繁殖の生態特性を分析し、本種の資源管理手法を提言する。
成果の内容・特徴
  1. パ・コーの耳石では透明帯が1年に1回出現し、輪紋が形成される(図1下)。すなわちこの輪紋は年輪であり、個体ごとの年齢を推定できる。
  2. 年輪を判読することにより、成長モデル(年齢-体長関係)の構築も可能となり、繁殖年齢・寿命等を推定できる。スリランカ等の他の熱帯域では本種は最大で体長90 cm以上に成長するとされるが、ラオス個体群では雌雄とも最大で体長50 cm程度であり、6-7歳でこの体長に達する(図2)。
  3. 成長モデル(von Bertalanffy成長曲線)では雌雄に有意な成長差は見られず(図2)、またスリランカ等、他の熱帯域の個体群と比較すると成長が遅い傾向がある。
  4. 成長モデル、メスの生殖腺重量指数(生殖腺重量/体重×100%)の季節変化、および体長と生殖腺重量関係(図略)から、本種は平均体長約20 cm(2歳)で性成熟し、乾季後半(3月以降)の水温上昇期に卵巣の成熟が進み、繁殖盛期は4月と推定できる(図3)。
  5. パ・コー資源の保全管理のためには、体長20 cm(2歳)以上の個体(性成熟個体)の繁殖期中(4月前後)の漁獲規制の施行、具体的には産卵水域(湖沼の沿岸浅場域)における禁漁期や禁漁区の設定が効果的である(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. パ・コーはラオス国内に複数の個体群が存在することから、本手法を用いて他の個体群(地域)の生態特性を明らかにすることにより、広域的な資源管理が可能となる。
  2. 7-8月頃に産卵水域周辺の湖沼の浅場に大量に出現する本種稚魚(体長4-5cm)は、食用として漁獲されるが、本種の資源保全のためには、こうした稚魚の漁獲規制についても今後検討を要する。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2016_c03
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2016_c03
カテゴリ 成長曲線 繁殖性改善

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