黒潮流域におけるサンゴの北限集団は遺伝的に分化

タイトル 黒潮流域におけるサンゴの北限集団は遺伝的に分化
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 西海区水産研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 鈴木豪
林原毅
発行年度 2016
要約 日本列島から琉球列島、台湾におよぶ海域において、代表的な造礁サンゴであるクシハダミドリイシの集団の遺伝的関係を解析し、本州沿岸の集団は台湾の集団と近縁で、黒潮を境に琉球列島を含む太平洋の集団と分化していることが分かりました。
背景・ねらい 近年、地球温暖化など急激な気候変動により、様々な生態系が影響を受けています。熱帯・亜熱帯の沿岸にみられるサンゴ礁は、この気候変動の影響で、分布域が大きく変動する可能性があります。特に、現在は琉球列島を中心に存在するサンゴ礁が、海水温上昇に伴って北上し、沿岸域の水産資源に大きな影響を与えることも考えられます。しかし、サンゴ礁を構成するサンゴには、多くの種が存在し、種ごとの分布変動傾向は明らかになっていません。また、本州南岸など日本の本土地域には、サンゴ礁はなくてもサンゴが生息している場所(非サンゴ礁地域)があり、そのサンゴ集団と沖縄などのサンゴ礁地域の集団と、同じ種でも交流があるかどうかは分かっていません。そこで、水産研究・教育機構は、「クシハダミドリイシ種群」という西太平洋に広く分布する種(写真1)を対象として、日本列島、琉球列島、台湾の各地(合計18地点)から標本を採集し、遺伝的関係を明らかにしました。 
成果の内容・特徴 その結果、琉球列島周辺には4種の隠蔽種(A、B、C及びDタイプ)が存在することを明らかにし、そのうちDタイプの1種のみが日本列島の非サンゴ礁地域に生息していることが分かりました(図1)。さらに、日本列島の集団のDタイプは台湾の集団のそれと同じ遺伝的特徴を持ち、琉球列島を中心としたサンゴ礁域の集団と遺伝的に分かれていることを明らかにしました。台湾と琉球列島の境には黒潮が流れており、黒潮がサンゴ集団の分化に寄与している可能性が高いと考えられます。この結果は、これまで南方から日本列島まで生物を運んでくると思われてきた黒潮に、河川のように両岸の集団間の交流を分断するという作用があることを示唆しています。また、太平洋の他地域集団の遺伝子データと比較解析した結果、琉球列島の集団は、C・Dタイプともに南半球のオーストラリアと同じ集団になることが明らかとなり、黒潮という流れの壁がいかに強力かを表す証拠になりました。 
成果の活用面・留意点 これらは、今後、サンゴ礁の北上メカニズムを解明し、沿岸漁場など日本周辺の環境変動を予測する上で、重要な知見となることが期待されます。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6099&YEAR=2016
カテゴリ 亜熱帯

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