雄性不稔維持遺伝子型(rf1)を識別できるDNAマーカーを利用した効率的選抜法

タイトル 雄性不稔維持遺伝子型(rf1)を識別できるDNAマーカーを利用した効率的選抜法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2006~2016
研究担当者 田口和憲
久保友彦
森谷麻里
樋山肇
松平洋明
発行年度 2016
要約 開発したDNAマーカー(s17-CAPS)は、テンサイの放任受粉集団では複対立遺伝子系で保持されている5種類のRf1座のアリルを識別でき、このうち4型は細胞質雄性不稔維持遺伝子型に典型的に認められるため、雄性不稔系統の効率的な選抜へ利用できる。
キーワード テンサイ、細胞質雄性不稔、稔性回復、一代雑種、DNAマーカー
背景・ねらい 雑種強勢を積極的に品種改良へ活用するには、純度の高いF1種子を効率的に得ることが重要である。テンサイ(Beta vulgaris)では、Owen(1942)により発見されたOwen型細胞質雄性不稔を活用して、高純度のF1種子を得る採種法を利用している。ところが、テンサイの放任受粉集団を細胞質雄性不稔テスターに交配すると、F1の稔性回復程度は不稔から高稔性回復まで様々な表現型が分離し、雄性不稔維持遺伝子型の選抜率は数%しかない。
近年、発見された高稔性回復遺伝子(Rf1)は、農研機構の育種系統NK-198が保持する高稔性回復遺伝子(bvORF20)であり、単因子でOwen型細胞質雄性不稔を稔性回復できる。そこで、不稔型から高稔性回復型まで、様々な機能的変異が想定されるRf1座周辺の分子構造多型に着眼して不稔遺伝子型固有のDNA塩基配列を特定し、雄性不稔維持遺伝子型(rf1)の個体選抜に有効なDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. 幅広いテンサイの放任受粉集団や育成系統においてbvORF20の近傍にある塩基配列を比較すると、bvORF20の近傍領域には多様なDNA多型が見つかる複対立遺伝子系である(図1、図2)。
  2. Rf1遺伝子座と連鎖不平衡にあるbvORF17との遺伝子間領域にある共通配列s17のPCR産物を2つの制限酵素(HapIIおよびHindIII)で同時に消化すると、5種類の制限酵素断片長多型を確認できる(図1、図2)。
  3. s17-CAPSで分類したDNA多型に基づき、日本の雄性不稔維持花粉親が保持する遺伝子型の割合を調べると、4型ホモの遺伝子型が大半を占める(表1)。
  4. 放任受粉集団が保持しているs17-CAPSの4型の遺伝子頻度はいずれも20%以下と少なく、雄性不稔維持遺伝子型(4/4ホモ遺伝子型)の出現頻度は低い(図3)。
  5. s17-CAPSマーカー(4型)は日本の雄性不稔維持花粉親に使われている典型的な不稔遺伝子型であり、他の稔性回復遺伝子型との識別性が高い。マーカー情報を利用した雄性不稔維持花粉親の個体選抜にも成功しており、短期間で効率的に雄性不稔系統を育成できる。
成果の活用面・留意点
  1. 開発したDNAマーカーのプライマー配列と実験方法の詳細は、Crop Sci. 54:1407-1412(2014)に記載している。
  2. テンサイのOwen型細胞質雄性不稔を利用する場合に限り、雄性不稔維持花粉親の効率的な選抜へ利用できる。
  3. Rf1遺伝子座とは異なる稔性回復効果を持つ新規稔性回復遺伝子が存在するので、雄性不稔維持遺伝子型の選抜の際には雄性不稔テスターとの検定交配が必要である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2016/harc16_s09.html
カテゴリ 育種 受粉 DNAマーカー てんさい 品種改良

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