稲わら堆肥連用はメコンデルタ水田に増収をもたらし、炭素隔離に貢献する

タイトル 稲わら堆肥連用はメコンデルタ水田に増収をもたらし、炭素隔離に貢献する
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2020
研究担当者 渡辺 武
Luu Hong Man
発行年度 2017
要約 ベトナム・メコンデルタの水田における長期連用試験より、ヘクタールあたり6 tの稲わら堆肥の施用は、無施用に比べ、水稲収量を乾期作で0.75~0.87 t、雨期作で0.91~0.96 t高め、土壌炭素量を年間356~401 kg ha-1 year-1増加させる。
キーワード 長期連用試験, 稲わら堆肥, 水田肥沃度, 土壌炭素隔離, 可給態ケイ酸
背景・ねらい ベトナム・メコンデルタは年間2千万t以上の米を産出する東南アジア最大の穀倉地帯である。農家は収穫後、稲わらを持ち出すか焼却しており、これは、ベトナム北部の紅河デルタと異なり、土壌有機物や養分供給能が高いため、水田への有機物施用の必要性が認識されなかったことによる。ところが、近年の堤防整備などで洪水がもたらす養分供給量が低下する一方、年間2作または3作という集約的な水稲作付により、水田の土壌肥沃度の低下が危惧されている。稲わらは現地の有機物資源として有用であるが、稲わらの農地還元が水稲生産及び土壌肥沃度に及ぼす長期的な影響は十分に解明されていない。そこで2000年から2015年まで、16年間31作の連用試験を行い、水稲収量と土壌養分ならびに土壌炭素含有率への影響を定量的に解明する。
成果の内容・特徴
  1. ベトナム・メコンデルタの試験圃場で、6週間発酵させた稲わら堆肥6 t ha-1施用の有無と化成肥料の施肥量を変えた処理を組み合わせた連用試験を2000年から開始し、水稲を毎年2作(雨期作及び乾期作)栽培する。稲わらを農地還元しない慣行区に対する稲わら堆肥を連用した区の相対収量は、試験開始当初は差が無いが、2010年まで10年間経年的に増加する(図1)。
  2. 稲わら堆肥を連用した区と無施用を続けた区の収量を、連用効果が頭打ちとなった2011年以降で比較すると、慣行に対して40%~60%の化成肥料と稲わら堆肥を組み合わせて連用した区の収量は、化成肥料のみを施用した区より乾期作で各々0.87、0.75 t ha-1、雨期作で0.91、0.96 t ha-1高い(図2)。
  3. 表層土壌(0~10 cm)中の可給態ケイ酸量は、稲わら堆肥連用区で無施用区より平均で10.4 mg kg-1 高い(図3)。稲わら堆肥によるケイ酸量の増加が増収効果に寄与していると考えられる。
  4. 慣行に対して40%、60%の化成肥料と稲わら堆肥を組み合わせて連用した水田で表層10 cmの土壌中の全炭素量が平均して各々401及び356 kg ha-1 year-1増加しており、熱帯の水田土壌も有機物施用により炭素隔離に貢献できる(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. メコンデルタ水田にて稲わら堆肥施用が水稲収量を向上させること、また熱帯水田土壌が炭素隔離を通じ気候変動を緩和できることを示しており、気候変動に関する国際連合枠組条約のCOP21で議長国により提案され日本も関与している「4‰イニシアティブ」に貢献しうる。
  2. ベトナム他、熱帯アジア諸国の政府機関の農業部局、環境政策部局での活用が期待される。
  3. C/N比の低い完熟稲わら堆肥を施用しているが、水田への有機物投入に際してはメタン排出について留意する必要がある。また、水田土壌を含めた熱帯耕地土壌の炭素隔離に関し、他の地域の有機物長期連用試験の結果も参照する必要がある。
  4. 可給態ケイ酸量は、ケイ酸肥料の施用によっても改善できるが、費用の検討が必要である。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_a01
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_a01
カテゴリ 肥料 水田 水稲 施肥

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