ソルガム根での難水溶性と水溶性の硝化抑制物質の分泌機構には差異がある

タイトル ソルガム根での難水溶性と水溶性の硝化抑制物質の分泌機構には差異がある
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 Subbarao Guntur Venkata
吉橋 忠
T. Di
Afzal M. R.
Zhu Y.
DeshpandeSimon S.P.
発行年度 2017
要約 ソルガム根から分泌される水溶性硝化抑制物質の分泌は低い根圏pHで促進され、細胞膜のプロトンATPアーゼの活性が関与する。一方、ソルゴレオンが抑制活性の多くを占める難水溶性硝化抑制物質の分泌は、根圏pHの影響を受けにくい。
キーワード ソルガム, 生物的硝化抑制, BNI, 硝化抑制物質, ソルゴレオン
背景・ねらい ソルガムは、根から生物的に難水溶性および水溶性の2種類に分類される硝化抑制物質を分泌して土壌の硝化(硝酸化成)を抑制し、植物の窒素吸収量を増加させる(生物的硝化抑制、BNI; Biological Nitrification Inhibition)。このうち、水溶性硝化抑制物質の分泌には、根圏pHに加え、細胞内へのアンモニウムイオンの取り込みに伴う細胞膜H+-ATPアーゼが関与し、本酵素の遺伝子の転写レベルで分泌が制御されている(平成25年度国際農林水産業研究成果情報21平成27年度国際農林水産業研究成果情報23)。一方、ソルゴレオンに代表される難水溶性硝化抑制物質(平成26年度国際農林水産業研究成果情報24)の分泌については、根圏pHの影響は明らかにされていない。そこで、BNI能に差異がある遺伝型の異なるソルガムを用いて、ソルガム根での難水溶性硝化抑制物質の分泌に及ぼす根圏pHの影響を解析する。また、これまでに大まかな解明がなされている水溶性硝化抑制物質の分泌機構について同じ遺伝型を用いてより詳細な解析を進める。上記2つの硝化抑制物質の分泌の詳細を明らかにすることにより、土壌中でのソルガムのBNI能の活用を図るための基本情報とする。
成果の内容・特徴
  1. ソルガムの根での難水溶性BNI活性とソルゴレオンの分泌量との間には正の相関がある(図1)ことから、難水溶性BNI活性にソルゴレオンが重要な役割を果たしている。
  2. ソルゴレオンの分泌は、根圏pHの影響を受けにくい(図2)。
  3. 水溶性硝化抑制物質の分泌は、根圏pHから大きな影響を受け、低い根圏pHで促進される(図3)。
  4. 細胞膜H+-ATPアーゼ活性と水溶性BNI活性の間には正の相関があり、細胞膜H+-ATPアーゼが水溶性硝化抑制物質の分泌に大きく関わっている(図4a)。
  5. これに対し、難水溶性BNI活性と細胞膜H+-ATPアーゼ活性と間には関係性がみられない(図4b)。
  6. 以上より、ソルガム根での難水溶性と水溶性の硝化抑制物質の分泌機構には差異がある。
成果の活用面・留意点
  1. 水溶性硝化抑制物質の分泌は低い根圏pHにより促進されることから、ソルガムの水溶性硝化抑制物質によるBNI能は、pHが低い土壌で多く発揮される。
  2. ソルガムにおけるソルゴレオンを含む難水溶性硝化抑制物質の分泌は、水溶性硝化物質に比べpHの影響を受けにくいが、酸性側の根圏pHでやや抑制される傾向がある。
  3. 難水溶性硝化抑制物質の分泌量には大きな系統間差があり、大部分がソルゴレオンであることから、ソルガムのBNI能の活用に向けソルゴレオン分泌量に着目することが重要である。
  4. ソルゴレオンによるソルガムでのBNI能は、土壌pHの影響を受けにくいため、様々な環境下でも活用でき、遺伝的改良により強化することが可能である。また、特にBNI能の活用が求められる低窒素栄養条件の生産環境において、窒素利用効率の向上が期待できる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_a04
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_a04
カテゴリ ソルガム

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