ガーナの河川氾濫原が畔のない天水条件でも生産性の高い稲作適地となる

タイトル ガーナの河川氾濫原が畔のない天水条件でも生産性の高い稲作適地となる
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2015
研究担当者 辻本 泰弘
小田 正人
桂 圭佑
藤原 洋一
坂上 潤一
Inusah Baba
Fuseini Abraham
Dogbe Wilson
Zakaria Alhassan I.
発行年度 2017
要約 ガーナで未利用の河川氾濫原は、畦畔および灌漑設備のない天水条件においても、土壌炭素量の高い土地の選定と、欠乏する硫黄成分の施用を組み合わせることで、施肥窒素の利用効率に優れ、最大5.4 t ha-1の籾収量を実現する優良な稲作可耕地となる。
キーワード 西アフリカ, 河川氾濫原, 天水稲作, 硫黄欠乏, 窒素利用効率
背景・ねらい ガーナの河川氾濫原は比較的肥沃度の高い土壌をもち、季節的に湛水することから、イネ可耕地として期待が大きい。しかし、その多くは農耕地として未利用である。これまで、ボルタ川流域の氾濫原では、水源(河川および後背湿地)に近づくほど、指数関数的に土壌炭素量および雨期の湛水可能性が増大すること、土壌の硫黄欠乏が存在することを明らかにしている(平成24年度国際農林水産業研究成果情報13同14)。そこで、水源からの距離が異なり、既存の農耕地から未利用の低湿地に至る連続的な地形条件でイネを栽培することにより、河川氾濫原におけるイネの生産性の高さを実証するとともに、その環境に適した効率的な施肥技術を提案する。
成果の内容・特徴
  1. 対象となる河川氾濫原では、畦や灌漑設備なしに、季節的な自然湛水が生じる(図1)。
  2. 水源からの距離400 m以内の範囲に、土壌炭素量が高く、未利用の低湿地が広がる(図2、平成24年国際農林水産業研究成果情報14参照)。
  3. 幅広い降水条件*において、水源に近く土壌炭素量の大きい未利用の低湿地(L1~L4)が既存の農耕地(L5~L7)に比べて高い生産性をもち、窒素(N)と硫黄(S)を施用することで、平均3.2~4.0 t ha-1、最大5.4 t ha-1の籾収量が得られる(図3)。
  4. 窒素利用効率(窒素投入量あたりの籾増収量)**は、硫黄を加えることで倍増する。特に未利用低湿地(L1~L4)の窒素利用効率が既存の農耕地(L5~L7)に比べて高く、硫黄を加えることで28.4~32.6の値が得られる(表1)。
  5. 3、4で挙げた未利用低湿地(L1~L4)の収量および窒素利用効率は、いずれも同地域の灌漑水田と同等の値である。
  6. 本成果は、灌漑設備および肥料投入が限られたガーナにおいて、天水条件でのイネの生産性に優れた河川氾濫原に広がる未利用地の存在と硫黄施用の効果を実証するものである。
* 冠水リスクの高い生育初期の降水量として、2010~2015年が51~194mm、試験期間中が105~194mm。
**
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は西アフリカにおける未利用の河川氾濫原に広く適用できる可能性がある。
  2. 硫黄成分の施用は、硫酸アンモニウムを播種時に表層施肥するだけで十分な効果が得られる。
  3. 本成果をもとに未利用低湿地の更なる活用が期待されるが、農家がイネ栽培を実践するためには、冠水による減収リスクの長期的観測や同環境へのトラクターのアクセス向上が求められる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b03
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b03
カテゴリ 肥料 水田 水稲 施肥 播種

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