ガーナの農家が自ら実践できる自生植物の被覆による水田水利施設の補強技術

タイトル ガーナの農家が自ら実践できる自生植物の被覆による水田水利施設の補強技術
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2017
研究担当者 團 晴行
廣内 慎司
廣瀬 千佳子
Emmanuel Ofori
Adzraku Hannah
Agodzo Sampson
発行年度 2017
要約 水稲栽培の機運が高まっているガーナ内陸低湿地を対象に、コメの増収かつ安定生産の要となる用排水路や畦畔の地表面を自生植物で被覆する。これは、農家の技術水準および経済状況を考慮した施工工法で、持続的な維持管理が可能な補強技術である。
キーワード 維持管理工, 雨滴侵食, コメ, 施工工程, 低コスト
背景・ねらい ガーナでは、消費されるコメの34%が現地で生産され、毎年66%に当たる68万トンが輸入されている状況にあり、かんがい水田の生産性向上が求められる。かんがい稲作を実現するためには、用排水路や畦畔といった水田水利施設が重要な役割を果たす。しかし、低湿地を開田したガーナ内陸部では、日常的に生じる激しい降雨や維持管理不足などの理由により、水田水利施設が機能を満足に発揮せず、低収量の水田が散見される。FAOの報告によると、土壌表面の40%を被覆することによって雨滴による侵食作用を90%軽減できるとされている。このため、水田水利施設が崩壊に至る初期段階に、雨滴衝撃によって土粒子を剥離させない予防保全の考えに基づき、水田水利施設表面に密な植物群落を成立させ、機能を永続的に維持させる補強技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 使用する植物は、生態系への影響や農家の負担を最低限に抑えるため、ガーナの自生植物の中から選定する。水田水利施設に生息する植物は、現地特有の環境ストレス耐性をすでに有しているため、他の植物に比べて有利である。
  2. 施工工法は、さし芽による正方形の株植工で、適用範囲は潤辺(水中に没する面)を除く水路法面および天端とする。植栽密度は、農家にとって技術的に問題がなく、容易に素早く植栽できる間隔である15cm×15cmを標準とする(図1)。
  3. 10cm湛水下および0.15m/s流水下での土壌崩壊度試験は、無植生に比べ、オキナワミチシバ(Chrysopogon aciculatus)などの自生植物を用いた被覆が土壌を補強することを示す(図2)。
  4. 施工工程は、①地表面が硬く、根の伸長が困難となる乾期(12~2月)を避け、②工費の低減を図るため農家自身が施工できる農閑期(11~3月)、および③高強度の降雨が生じる大雨期以降の穏やかな水供給が期待できる雨期末(7~11月)に植栽できるよう設定する(図3)。
  5. 本補強技術の用排水路100m当り施工費と10年間の維持管理費の合計額は、現況土水路と同等、コンクリート水路の概ね半額となる。農家自身が施工する場合は、自家労働費として扱われることとなり、本補強技術の導入には現金による支払は発生しない。
成果の活用面・留意点
  1. 本補強技術は、日常的に生じる激しい降雨や維持管理不足などの理由により水田水利施設が機能を満足に発揮していない西アフリカの類似地域においても適用できるが、適用地域の自生植物の特性を明らかにして、農家の要望を満たす種を選定することが重要となる。
  2. 新たな自生植物を導入する場合には、植栽する水田水利施設から本田に侵入してイネ栽培の障害とならないよう、事前に導入植物の防除技術を確立することに留意する。
  3. 植生工は構造物工などと異なり、植物の生育とともに法面保護などの機能を増大させるため、施工完了初年度の重点的な維持管理が水路機能を永続させる要件となる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b04
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_b04
カテゴリ 病害虫 水田 水稲 低コスト 防除 水管理

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