開花遺伝子の発現動態から東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」現象を予測する

タイトル 開花遺伝子の発現動態から東南アジア熱帯雨林の「一斉開花」現象を予測する
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2014~2016
研究担当者 谷 尚樹
佐竹 暁子
市榮 智昭
沼田 真也
Yeoh Suat Hui
Lee Soon Leong
Basherudin Norlia
Muhammad Norwati
発行年度 2017
要約 東南アジア熱帯雨林の主要林冠構成樹種であるフタバガキ科樹種は、一定の乾燥かつ低温の気象条件が9~11週間続くと一斉開花する。環境要因、開花遺伝子の発現、一斉開花の関連性に基づいて開発したモデルにより、これまで困難であったフタバガキの一斉開花が降水量と気温のデータから予測できる。
キーワード 東南アジア熱帯雨林, 一斉開花, フタバガキ科, 開花遺伝子, 開花予測モデル
背景・ねらい 東南アジアの熱帯雨林ではフタバガキをはじめとする様々な樹種の木々が数年に一度、不定期に一斉に開花・結実する「一斉開花」という現象が起きる(図1)。一斉開花は主に低温や乾燥などの環境要因によって起こると考えられているが、その関連性は解明されておらず、これまで一斉開花を予測することは困難だった。
フタバガキ科の樹木は一斉開花を起こす東南アジアの熱帯雨林を構成する代表的な樹種で、ラワン材として広く利用されている。実生苗木の生産は天然種子の採取に依存しているが、種子を保存できず開花・結実も予測できないため、計画的な苗木生産ができなかった。また、気候変動による環境要因の変化で一斉開花の発生パターンに変化が生じれば、フタバガキ科を含む樹木の再生産ばかりでなく動物相も含めた森林生態系への深刻な影響が危惧される。そこで、約4年間にわたるフタバガキ科サラノキ属の主要2樹種(Shorea curtisiiおよびS. leprosula)の開花遺伝子の発現と環境要因のモニタリングにより、フタバガキの一斉開花予測モデルを開発する。
成果の内容・特徴
  1. 多くの植物の開花遺伝子の一つと考えられるFTおよびLFY遺伝子がフタバガキ科でも見いだされ、一斉開花の少なくとも1ヶ月前に葉と芽の両方でこれらの遺伝子の発現が開始する(図2)。
  2. 開花遺伝子の発現を引き起すには、9?11週に渡り連続して日平均気温が25.7°Cを下回り、かつその期間の降水量が182mmを下回る気象条件が必要である。乾燥または低温の条件の一方でも満たされなければ開花遺伝子は発現しない(図2)。
  3. フタバガキ科の主要樹種では、一定の乾燥かつ低温の気象条件が9~11週間続くと開花遺伝子が発現し、さらに1ヶ月以上を経て一斉開花に至る。このことから、環境要因、開花遺伝子および一斉開花の関連性が認められる。
  4. これらの知見から開発したフタバガキの一斉開花予測モデル(図3)により、ある地域の降水量と気温のデータに基づきその地域でのフタバガキ科樹種の一斉開花の予測が可能となる。
成果の活用面・留意点
  1. 一斉開花の地域と時期を予測することにより、これまで偶然の観測に頼っていた苗木生産のための種子採取が計画的かつ効率的に行えるようになり、苗木の安定生産に貢献できる。
  2. 今後起こりうる気候変動の下での一斉開花現象の変化を予測することで、気候変動が与える森林更新、生態系への影響の考察に貢献する。
  3. 今回の結果は観測期間4年間の間に生じた2回の一斉開花を基に予測モデルを構築している。一斉開花の観測機会が増えれば、より精度の高い予測モデルへの改良が可能となる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_c03
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2017_c03
カテゴリ 乾燥 苗木生産 モニタリング

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる