タイトル |
成長点局所加温とCO2施用を組み合わせた高収益ミニトマト栽培技術 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門 |
研究期間 |
2010~2017 |
研究担当者 |
河崎靖
田中寿弥
松本比呂起
足立裕亮
寺口徹
川西孝秀
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発行年度 |
2017 |
要約 |
温風ダクトをミニトマト群落上に吊り下げ、成長点付近を局所的に加温することで、暖房に係る燃料消費は10%削減できる。吊り下げたダクトを利用しCO2施用を行うことで収量は8%増加する。技術の導入により10a当たり農業所得は約32万円増加する。
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キーワード |
ミニトマト、暖房、CO2施用、省エネ、多収
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背景・ねらい |
暖房を必要とする施設生産にとって、昨今の燃油価格の乱高下は経営に大きな影響を与えることから、経営費に占める暖房費の割合を低下させることが経営の安定化のために重要である。そこで、ミニトマト促成栽培を対象とし、加温が必要な成長点付近を局所的に加温し、群落下部の加温を抑えることで、暖房に係る燃料消費を削減することを目指す。加えて、暖房用のダクトを活用したCO2施用を組み合わせることで収量を増加させ、技術導入による総合的な高収益施設生産技術を開発・実用化する。
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成果の内容・特徴 |
- 慣行(従来型の暖房を実施しCO2施用は実施しない栽培)では施設通路上に敷設する温風ダクトを本栽培法ではミニトマト群落上に吊り上げて設置し、温風を成長点付近に直接当たるように、ダクトの斜め下方向に穿孔する(図1)。穴の間隔は、ダクトを4分割して、暖房機に近い側からそれぞれ1m、50cm、25cm、12.5cmとし、穴の大きさは直径6mm程度とする。暖房機の温度設定は慣行と同一とするが、温度センサーは温風が当たる成長点付近に設置する。また、風量確保のため送風ファン(出力1.5kW程度)を10a当たり1台設置し、暖房機と連動するように設定する。
- CO2発生器から出る高CO2濃度の温風を、暖房機の吸入口へポリダクトを用いて誘導し、暖房機の送風機能を用いて局所加温用のダクトを通じてCO2施用を行う(図1)。CO2濃度の設定値は700ppmとし、発生器と暖房機の稼働時間をタイマーで揃える。
- 成長点局所加温により、夜間の成長点付近の気温は群落下部より1°C程度高く推移する(図2)。成長点付近の気温が慣行並みに確保されれば、葉や花房の展開速度は慣行と同程度となる。
- CO2施用による光合成促進により、商品果収量は8.3%増加する。また、成長点局所加温により、暖房に係る燃料消費量は慣行と比較して10%減少する(図3)。
- 技術の導入により、10a、1年当たりの資材・減価償却費が約17万円、CO2施用のための燃料費が約12万円必要となる。一方で暖房費が約4万円減少し、農業租収益は約57万円増加する。これらによって、農業所得は約32万円増加する(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:トマトおよびミニトマトの施設生産者。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の促成もしくは長期多段採り作型で、つる下ろし誘引もしくは斜め誘引を実施している園芸施設およそ50ha。
- その他:
・成果の詳細は「成長点局所加温とCO2施用を組み合わせたミニトマト栽培技術」として公開しており、ダウンロード可能である。 ・根域温度が慣行より低下する可能性があるため、隔離土耕や養液栽培などの根域が制限される栽培では根の低温障害に注意する必要がある。また、暖房負荷が高いほど成長点局所加温の燃料削減効果は高まる。 ・夜温は2017年1月24~25日の値を表示。燃料消費量は2016年12月14日~翌年1月13日を集計。収量は2016年10月~翌年6月を集計している。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/popular/result030/2017/17_047.html
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カテゴリ |
経営管理
栽培技術
CO2施用
省エネ・低コスト化
トマト
ミニトマト
養液栽培
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