伊勢湾産イカナゴにおける近年の不漁の原因

タイトル 伊勢湾産イカナゴにおける近年の不漁の原因
担当機関 愛知県水産試験場 本場 漁業生産研究所
研究期間 2003~2017
研究担当者 中村元彦
植村宗彦
林茂幸
山田大貴
山本敏博
発行年度 2017
要約 資源の加入から漁獲、夏眠、産卵、ふ化・成長を経て翌年の加入に至る各過程における個体数の変化を調べ、個体数減少に影響する要因を検討した。近年の不漁は、夏眠魚とふ化仔魚の生残が悪く、再生産成功率が低いことに起因する。夏眠魚の生残については、夏眠場の水温や大型魚類の捕食圧、ふ化仔魚の生残については、冬季の降水量や黒潮流路に左右される外海の海況の影響が示唆された。
背景・ねらい 伊勢湾産イカナゴは、愛知・三重両県の漁業者が解禁日の設定に加え、1992年からは翌年の産卵に必要な親魚量の確保のために終漁日の設定を行って資源管理している。これらの取組の結果、2002年以降は十分な親魚が確保され、2002~2014年は平均301億尾の加入資源を得ることができた。ところが、2015年は加入尾数が89億尾、2016年はさらに少なく、禁漁を余儀なくされてしまった。
成果の内容・特徴
 イカナゴは、概ね5月から12月にかけて夏眠する。夏眠魚の5~7月平均採集数と10~12月平均採集数から求めた生存率は、平均が0.57であったが、2014~2016年は0.1を下回っており、近年夏眠魚の生残が極端に悪い。イカナゴは、ブリ、スズキ、エイ類など多くの大型魚に捕食されている。同じように重要な餌料生物であるシラスの漁獲量との関係を調べたところ、夏シラス(7~9月)の漁獲量が少ないと夏眠魚の生存率が低い傾向が見られた(r=0.576、p<0.05)。夏シラスが少ないと夏眠魚への捕食圧が相対的に大きくなり、生存率が低くなると考えられる。

 伊勢湾口部で1月上旬にふ化する仔魚の生残については、12~1月の名古屋の降水量が多いと再生産成功率が低く(r=-0.434、p<0.01)、沖合200m層水温13ヶ月移動平均値の1月の値が高いと再生産成功率が低いことから(r=-0.686、p<0.01)、降水によるエスチャリー循環の強化や黒潮流路に左右される外海から湾口部への暖水の流入が仔魚の湾外への無効分散を促進するものと考えられる。
成果の活用面・留意点 2007年からは翌年の産卵に必要な親魚を20億尾以上残すことを目標として終漁日の設定を行っているが、夏眠魚が大きく減少する状況が続くようであれば、残すべき親魚の尾数を増やす必要がある。また、漁業者の情報から湾内にも小規模な夏眠場があるとみられるので、湾内の夏眠場の分布や機能について調べる必要がある。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7042&YEAR=2017
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