タイトル | 高級ハタ類キジハタの効率的な陸上養殖に成功 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 |
研究期間 | 2014~2016 |
研究担当者 |
森田哲男 今井正 今井智 山本義久 大山憲一 原佐登子 越智洋雅 向井龍男 |
発行年度 | 2017 |
要約 | キジハタは、成長が遅いため商品サイズまで4~5年を要し経費の観点から養殖困難であった。そこで、キジハタの良好な成長や餌料効率などが得られる飼育環境を調査し、水温25℃、塩分19~26psで飼育することで、約2年で養殖が可能となった。さらに我々が開発した飼育水を浄化して繰り返し使用する閉鎖循環式飼育システムを活用することで、低コストで効率的なキジハタの陸上養殖が現実的となった。 |
背景・ねらい | キジハタは瀬戸内海を代表するハタ類で、高値で取引されることから養殖対象種としてニーズの高い魚種である。しかし、水温の低い冬季に成長が停滞し商品サイズ(500g)までには4~5年を要することから養殖は困難とされてきた。そこで、我々はキジハタの成長に適した水温と塩分を明らかにすることで養殖期間を大幅に短縮させた。また、我々が開発した閉鎖循環式飼育システムを用いることで好適な飼育条件を低コストで維持することが可能となるため、キジハタ養殖が現実的となった。 |
成果の内容・特徴 | キジハタの良好な成長や餌料効率などが得られる水温について、平均体重が68、146、268gの3試験区による比較実験を行った。キジハタはどの区においても19~31℃の範囲では高水温ほどよく成長するが、水温25℃が最も餌料効率(給餌量に対する増重した割合)は良かった(図1)。この結果を受けて5t水槽で飼育したところ、25℃と30℃はほぼ同等に成長するが、餌料効率は25℃で高いことが再現された。また、水温と同様にキジハタの良好な成長や餌料効率などが得られる塩分について、平均体重が23gと91gの2試験区を用いて比較実験を行った。キジハタは7psu(約20%希釈海水)以下では死亡すること、32psu(一般来な海水)以上に比べて19~26psu(60~80%希釈海水)において成長が良好であることを明らかにし(図2)、半年間の5t水槽における飼育実験においても19~26psuでの成長が32psuより良好であることを確認した。これらの結果により、5t水槽を用いた66週間の長期実証飼育を行ったところ、水温25℃、塩分19~26psで飼育することで、約2年で商品サイズまで育てることが可能であることがわかった(図3)。 キジハタを効果的に成長させる飼育条件を把握できたが、一般的なかけ流し飼育でこの水温や塩分を維持することは経費面から現実的ではなく、我々が開発した飼育水を浄化して繰り返し使用する閉鎖循環式飼育システム(図4)を活用することで、低コストで効率的なキジハタ陸上養殖の実現が可能と考えている。 |
成果の活用面・留意点 | キジハタは養殖実績が全くない対象種であり、新規養殖対象種として期待できる。また、閉鎖循環式飼育システムを用いた飼育手法であるため、沿岸域だけでなく内陸域での陸上養殖への活用が考えられる。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7099&YEAR=2017 |
カテゴリ | 低コスト |