雌の小型化はクルマエビ資源の減少要因か?

タイトル 雌の小型化はクルマエビ資源の減少要因か?
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所
研究期間 2015
研究担当者 佐藤 琢
発行年度 2017
要約 近年資源量が低迷しているクルマエビにおいて、まず雌の小型化の有無について、次に雌の体サイズと繁殖特性の関係について調べた。その結果、雌の体サイズが近年小型化していること、大きな雌から生まれる幼生ほど大きく、飢餓耐性の高いことが示され、雌の小型化による幼生の質の変化が本種資源の加入量の減少や不安定化を招いていることが懸念された。
背景・ねらい 大型個体の減少は雌の繁殖特性の変化を介して個体群の加入量に減少や不安定化を招くことがある。クルマエビの漁獲量は1990年代から減少しはじめ、今では最盛期の約8.9%にまで縮小している(図1)。しかし、資源量低迷要因はわかっていない。もしかしたら、漁獲による雌の小型化が繁殖特性を変化させ、加入量の減少や不安定化、ひいては資源量低迷を招いているかもしれない。そこで、まず本種資源における小型化の有無を、次に雌の体サイズと繁殖特性のひとつである「ふ化幼生の質」との関係を調べることによって、雌の小型化が資源量低迷の潜在的メカニズムである可能性について調べた。
成果の内容・特徴 まず、漁獲量の減少がみられている最中の1996~2010年にかけて、大分県佐伯・鶴見市場に小型機船底引き網によって水揚げされた本種の体サイズデータを大分県農林水産指導研究センター水産研究部からご提供いただき、解析した。その結果、上記15年間で雌雄ともに体サイズが小型化していた(図2a、b)。次に、雌の体サイズとふ化時の幼生サイズ、および幼生の飢餓耐性の関係について調べた。その結果、大きな雌から生まれた幼生ほど体サイズが大きく(図3a、b)、飢餓耐性が高いことが示された(図4a、b)。幼生の生育環境(餌の豊度や捕食者の種組成等)は時空間的に変動するため、産出される幼生集団の質が多様であるほど、生残に有利な幼生が集団の中に含まれている確率が高くなる。それゆえ、本種資源における親の小型化は本種資源の加入量の減少や不安定化を招いていることが懸念された。
成果の活用面・留意点 大型雌を含んだ幅広い体サイズの雌集団を維持すれば、多様な質の幼生が産出され、個体群の加入量の増加や安定に寄与しうることが考えられる。そのため、本成果は本種に対する効果的な漁業管理策の構築に貢献することが期待できる。ただし、野外において上記仮説を実証するデータはまだ得られていないため、今後、野外調査・実験による実証が必要である。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7039&YEAR=2017
カテゴリ 繁殖性改善

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