畝間灌漑を改良した簡易サージフロー灌漑法は浸透損失を抑制し節水できる

タイトル 畝間灌漑を改良した簡易サージフロー灌漑法は浸透損失を抑制し節水できる
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2013~2020
研究担当者 大西 純也
池浦 弘
Paluashova G
Shirokova Y. L.
山中 勇
北村 義信
藤巻 晴行
発行年度 2018
要約 畝間への給水を1日間隔で2回に分けて行う簡易サージフロー灌漑法は、通常の畝間灌漑と比べ、灌漑中に生じる浸透損失を削減できる。この灌漑法は、新たな投資や大幅な労力の増加を伴わすに、圃場への給水量を19~22%節減できる。
キーワード 節水灌漑, 畝間灌漑, サージフロー灌漑, 塩類集積
背景・ねらい 乾燥地の灌漑農地では、過剰灌漑に伴う多量の水の浸透によって地下水位が上昇し、灌漑水および地下水に含まれる塩分が作土層に集積することで、農業生産に悪影響が生じている。ソ連時代に大規模な灌漑開発が行われたウズベキスタン共和国(ウ国)では、灌漑農地の約51%が塩類集積の影響を受けており、深刻な課題となっている。一般的に、地下水位の上昇抑制には節水灌漑が有効であるが、ウ国では灌漑設備や資金の不足から点滴灌漑や散水灌漑の導入が進んでおらず、広大な圃場で下方浸透の大きい畝間灌漑を行っている。畝間灌漑における節水技術であるサージフロー灌漑法(SF法)は、段階的な間断給水によって下方浸透を抑制するものであるが、配水管やバルブなどの資材が必要である。そこで、このSF法の利点を活かしつつ簡素化し、新たな施設や大幅な労力の増加を伴わない節水技術を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 通常の畝間灌漑(慣行法)では1回、SF法では4回程度に分けて行う給水を、1日間隔で2回に分ける簡易サージフロー法(簡易SF法)を考案した(図1)。簡易SF法は給水の切り替えが頻繁でないため、配水管やバルブを必要とせず、用水路から畝間へ直接給水する。
  2. 簡易SF法で畝間100 mに給水する場合、1回目は0 - 50 mに給水し、灌漑水が50 m地点に達した時点で給水を停止する。翌日の2回目では、0 - 100 m(全区間)へ給水する(図1)。
  3. 畝間に湛水したときの浸透量(畝間湛水試験)は、1日前に給水した水が浸透した湿潤な畝間では、乾燥状態の畝間よりも浸透性が低下し、60分間の積算浸透水量が67 %減少する(図2)。
  4. 慣行法に近い給水速度1.7 Ls-1では、1日前の給水による浸透量の減少により、2回目の給水時に灌漑水が畝間を早く流れ、畝間末端への到達時間および総灌漑時間が短くなる(図3)。
  5. 1.7 Ls-1の給水速度で畝間100 mに灌漑する場合、簡易SF法は慣行法と比べて19%節水できる。また、畝間を50 mに短縮すると、節水効果は約22 %に増加する(表1)。
  6. 5.0 Ls-1の給水速度で畝間100 mに灌漑する場合、灌漑水の流速が低下せず、慣行法でも短時間で畝間末端に到達するため、2回給水する簡易SF法では節水効果が得られない(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 簡易SF法は、浸透性の高い圃場で地表灌漑を用いている場合に適用可能である。
  2. 簡易SF法の適用においては、畝間への給水速度、畝間を流れる灌漑水の流速を考慮し、適用対象とする畝間長を検討する。
  3. 灌漑水の流速は畝間の勾配や不陸の影響を受けるため、簡易SF法による節水効果を得るには、1/500~1/1000程度の勾配を付けた均平な圃場の造成、均一な畝立てが有効である。
  4. ウ国では、水利費を面積割で徴収しているため節水意識は高くないが、簡易SF法を用いた節水により、地下水位の上昇を抑制するとともに栽培面積の増加が期待できる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_a06
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_a06
カテゴリ 乾燥

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