養魚ため池の貯留水を雨季水稲と乾季畑作に利用することで収益増が期待される

タイトル 養魚ため池の貯留水を雨季水稲と乾季畑作に利用することで収益増が期待される
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2014~2016
研究担当者 安西 俊彦
池浦 弘
Chomxaythong Amphone
Keokhamphui Khaykeo
Inkhamseng Somphone
藤巻 晴行
発行年度 2018
要約 ラオス中部の中山間農村では、養魚用ため池の貯留水の活用により、雨季初期に水が不足する圃場の初期灌漑と乾季には畑作を行うための補給灌漑が可能になる。養魚に必要な最低水量を維持することで、ため池を養魚と灌漑に併用できる。また4月上旬に貯留水を抜く慣行法よりも、乾季畑作の灌漑に合わせて2月に水を抜く方が利益の増加が見込まれる。
キーワード 養魚用ため池, 貯留水, 雨期水稲作, 乾季畑作
背景・ねらい ラオス中部・ビエンチャン県北西部N村の水稲作は水供給を天水に依存しており、特に水田域末端の圃場(図1)では雨季初期(水稲移植期)の水不足により移植が遅れるため水稲の収量が低い(平成27年度国際農林水産業研究成果情報C1)。また、乾期には水供給が無いため、水田域の多くで作物栽培が行われていない。この水田域の水源である2河川には6基の養魚用ため池が存在するが、流出口が高い位置にあるために水稲の移植時期にも約8,600m3の水が未利用のまま貯留されている(図2)。一方、水田で作付けが行われていない4月には養魚の収獲のために貯留水が放流されている。現状では未利用のこの貯留水を有効利用した水田域の用水計画を策定し、雨季水稲の適期移植のための初期灌漑と、乾期の畑作のための補給灌漑の可能性を検討する。
成果の内容・特徴
  1. ため池の貯留水は、水田域の末端圃場(図1)における水稲移植前の灌漑(初期灌漑:7月上旬)と水田域上流側の圃場におけるダイズ作の補給灌漑(12月~2月、計4回)に使用する。
  2. 養魚を行いつつ貯留水を灌漑利用し、従来通り4月上旬に水を抜く場合(Case 1)、養殖を行いつつ灌漑利用し、乾季畑作の灌漑に合わせて2月に水を抜く場合(Case 2)、養魚を行わずに全ての貯留水を灌漑に利用する場合(Case 3)の3例の用水計画について水収支計算を行い、灌漑可能面積を計算する(図3)。Case 1とCase 2では、灌漑時にも養魚に必要な最低水深(深さ50 cm)を維持できる貯留水を残して取水するよう計画する。
  3. 雨季の初期灌漑の可能面積は、Case 1と2が10.40 ha、Case 3が10.95 haであり、ため池の貯留水を利用することにより末端圃場(14.1 ha)の約75%で適期移植が可能になる。また乾季のダイズ作の灌漑可能面積はCase 1で17 ha、Case 2で37 ha、Case 3で52 haとなる(表1)。
  4. Case 2では養魚期間の短縮を補うための給餌代、Case 3では養魚の休業補償費を見込む。灌漑で得られる米とダイズの販売収入、養魚による収入と支出を試算すると、Case 1~3で現状(灌漑の未実施)から収益増が見込める(表1)。動物性タンパク質の供給源確保の点から養魚の維持(Case1, 2)が望ましい(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. ため池を養魚と灌漑に併用し、Case 2の用水管理を行うことにより、ラオス中山間地の農村において貴重なタンパク源である養魚を行いつつ、農業生産性を向上することが期待できる。
  2. 本成果は、N村と同様に雨季の水稲作と養魚を行っているラオス中北部の農山村に適用できるが、灌漑可能面積は対象地の水資源、土地利用の状況などを考慮し算定する必要がある。
  3. 動力ポンプやサイフォンなどの揚水機材が必要となる場合は資材の調達および燃料などの費用負担が必要になる。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_c04
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_c04
カテゴリ 水田 水稲 大豆 中山間地域 水管理

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