アユ天然遡上魚を用いた戻し交配手法で生産した放流種苗は冷水病耐性が高まる

タイトル アユ天然遡上魚を用いた戻し交配手法で生産した放流種苗は冷水病耐性が高まる
担当機関 千葉県水産総合研究センター
研究期間 2009~2016
研究担当者 尾崎 真澄
発行年度 2018
要約 アユ放流種苗の冷水病耐性を高めるため、天然遡上魚の雄を用いて戻し交配種苗を生産し、冷水病耐性を調べた。その結果、継代種苗は世代を経ると耐性は低下したが、戻し交配種苗は継代種苗より耐性が高く、世代を重ねても低下しなかった。また、継代時に生じる早熟化に対し、毎世代戻し交配を行うことでその影響は低減した。戻し交配は定期的な野生個体の導入方法として有効と考えられた。
背景・ねらい 千葉県では1994年にアユ冷水病が発生して以来、アユ放流資源に大きな影響を及ぼしてきたことから、冷水病に耐性のある種苗の作出が求められてきた。そこで、アユ天然遡上魚を親魚として生産した後、毎世代、天然遡上魚の雄親を用いた戻し交配手法により生産し、従来の継代種苗と冷水病耐性を比較した(図1)。
成果の内容・特徴 ・冷水病菌接種による攻撃試験を行ったところ、2週間の試験終了時の死亡率は、継代種苗が27.5~100%であるのに対し、戻し交配種苗は0~60%であり、いずれも戻し交配種苗の死亡率が有意に低かった。また、2016年に実施した戻し交配魚と天然魚との比較では、その死亡率に有意な差はなかった(表1)。 
・継代種苗の世代別累積死亡率の推移を見ると、世代を重ねることで早く死亡する傾向が見て取れ、継代により冷水病耐性が弱まっていくことが示唆された(図2)。 
・成熟状況を観察したところ、継代魚では排卵時期が早まっていくが、戻し交配魚は早期化しないことが確認され、計画的な採卵に資する知見が得られた(上田・尾崎,2018)。  
成果の活用面・留意点 ・戻し交配魚は、既に千葉県内各地のアユ種苗放流に用いられており、アユ冷水病による被害は生じておらず、河川採捕魚からの保菌検査でも冷水病菌は検出されていない。 
・戻し交配魚の生産にあたっては、雄のみ天然魚を利用するため、生産にあたって必要な親魚数が少なくて済むほか、毎年雄親に天然魚を用いることで、種苗生産時の近交弱性や遺伝的多様性の低下にも配慮でき,放流魚が再生産に寄与する場合でも問題は生じにくい。 
・アユ種苗生産時に生じる非意図的な選抜による成熟の早期化において、雄天然魚を用いた戻し交配手法は、その対処方法として有効である。 
・疾病対策として、河川放流時における非保菌種苗の使用は必須であり、戻し交配魚の利用にあたっては、保菌検査や河川でのモニタリング等も併用していくことが望ましい。  
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8175&YEAR=2018
カテゴリ モニタリング

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる