タイトル | ツノナシオキアミの自己消化酵素を利用した魚味噌製造技術 |
---|---|
担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 水産大学校 |
研究期間 | 2013~2017 |
研究担当者 |
福田翼 及川克敏 小野寺邦夫 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 春季に三陸沖で漁獲されるツノナシオキアミは、自己消化作用が強く、食品への利用が限られている。そこで、東南アジア地域におけるエビペースト製造法を利用し、ツノナシオキアミペースト製造を試み、最適な塩分条件を検討した。その結果、ツノナシオキアミペーストの製造は可能であり、発酵温度30℃・発酵開始3ヶ月目において、塩分20%が最適であった。 |
背景・ねらい | ツノナシオキアミ(Euphausia pacifica)は、春季(2月~5月頃)に三陸沖で漁獲されるオキアミの1種である。ツノナシオキアミは、自己消化作用が強く品質劣化が早い。従って、魚餌などが主な用途であり、食品への利用が限られている。一方、東南アジア地域では古くからエビペーストが製造されている。そこで、これらの製造法を利用したツノナシオキアミペーストの製造を試みた。 |
成果の内容・特徴 | (1) 東南アジア地域のエビペースト製造法を利用したツノナシオキアミペーストの製造を試みた。ツノナシオキアミの解凍は、4℃条件下で自然解凍を行った。脱水は送風乾燥機を使用し、水分が60%となるまで乾燥した。解凍・脱水したツノナシオキアミは、食塩と共にペースト化した。このツノナシオキアミペースト約1 kgをナイロン製容器内にて発酵させた。発酵温度は30℃とし、塩分条件は5%、10%、15%および20%とした。 (2) 自己消化酵素を利用したツノナシオキアミペーストを製造する場合、発酵期間中の一般生菌数の増殖が抑制される、すなわち、腐敗の目安とされる7 Log10CFU/gよりも低い値で推移する事が望ましい。そこで、発酵期間中の一般生菌数を調査した結果、発酵開始3ヶ月目までの一般生菌数は塩分20%が最も低かった。また、全ての塩分条件において、最も一般生菌数が高かった時期は発酵開始0.5ヶ月目であり、塩分5%では6.9±0.1 Log10CFU/g、塩分10%では7.9±0.1 Log10CFU/g、塩分15%では6.8±0.1 Log10CFU/g、塩分20%では5.2±0.3 Log10CFU/gとなった。従って、一般生菌数の結果では、塩分20%が最適な条件であると判断した。 (3) 発酵期間を3ヶ月とし、塩分5%、10%、15%および20%におけるツノナシオキアミペーストの官能評価を行った。嗜好性評価の結果、塩分20%は、塩分5%、10%および15%よりも「香り」、「味」、「組成」および「総合」に対する評価が高かったが有意な差は見られなかった(図2 左)。客観性評価の結果、塩分20%の「塩味」および「旨味」に対する評価は、塩分5%よりも有意に強かったが、塩分10%および15%では有意な差はみられなかった(図2 右)。従って、(2)の結果を踏まえ、塩分20%が最適な条件であると判断した。 |
成果の活用面・留意点 | ツノナシオキアミペーストは、発酵調味料としての利用が期待される。宮城県内の水産加工業者では、ツノナシオキアミペーストを利用した水産加工品の製造・販売を行い、全国展開を行っている。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8187&YEAR=2018 |
カテゴリ | 加工 乾燥 |