タイトル |
農業現場の継続的な改善活動を支援するリスクアセスメントシステム |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業技術革新工学研究センター |
研究期間 |
2011~2018 |
研究担当者 |
菅原幸治
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発行年度 |
2018 |
要約 |
農業現場における労働安全、食品安全、環境保全等に関わる様々な事故や違反の可能性をリスクと考え、リスクアセスメント手法に基づいて、リスク低減のための継続的な改善活動を支援するツールとマニュアルからなるシステムである。GAP認証取得の取組においても有効である。
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キーワード |
リスクアセスメント、改善活動、GAP、ハザード、改善策
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背景・ねらい |
農業現場では、労働安全、食品安全、環境保全等の持続可能性を確保する取組として、GAP(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)の普及が進められている。また、経営の大規模化・法人化や雇用労働者の増加に伴い、農業経営者にとって、企業責任として作業中の事故や違反の防止が大きな課題となっている。GAPの本質は多面的なリスクマネジメントの取組であり、事故・違反防止のほか品質向上や作業効率化等を目的にリスクを低減するという「改善活動」であるといえる。そこで本研究では、経営的損失につながる様々な事故や違反の可能性を「リスク」と考え、現場に潜むリスクを見つけ、評価し、低減するという「リスクアセスメント」の手法に基づき、農業現場における継続的な改善活動を支援するリスクアセスメントシステムを開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 本システムは、厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(2006)に基づくリスクアセスメント手法を適用しており、1)ハザードの特定、2)リスクの見積り、3)改善策の検討、4)改善策の実施を行うツール(図1)と、それらを用いた改善活動のマニュアル(図2)によって構成される。この繰り返しによって継続的な改善活動を可能にする。
- ツールを用いた改善活動のマニュアルは、上記のリスクアセスメント手法に加え、食品安全管理システムHACCPを中心に、労働安全衛生管理、品質管理、環境管理の既存マニュアルを組み合わせて大幅に簡略化したものである。改善活動を行う手順の概要を図2に示す。
- 現場で起こりうる様々な事故や違反の要因を「ハザード」とよぶ。ハザードによる経営的損失の大きさを「重篤度」、事故・違反発生の可能性を「発生可能性」とよぶ。これらを予め点数化し、さらにこの重篤度と発生可能性からマトリックス法によりリスクの大きさを3段階で点数化する。これを「優先度」とよび、残存するリスクの大きさの評価値とする。
- システムの主要ツール「農業現場リスクアセスメントツール」はMicrosoft Excelのファイルである(図3)。リスク評価表と改善策データベースが一体となったもので、一般的な農業現場で想定されるハザードとそれらの改善策の例が入力されている。利用者は最初に、すでに実施している改善策の行の「採択」欄にチェックを入れる。次に、各ハザードの優先度、すなわちリスクの大きいものについて、追加の改善策の「採択」欄にチェックを入れると優先度が低下するので、それを参考にして採択する改善策を決定する。また、各現場に応じて独自のハザードや改善策を追加入力することもできる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本システムの「農業現場リスクアセスメントツール」は、職務作成プログラム登録されている。主に経営者や農場管理者を対象にして、希望があればツールと改善活動のマニュアルを配付する。
- ツールはMicrosoft Excelのファイルであり、使用のパソコンにコピーすれば利用できる。
- JGAPやGLOBALG.A.P.などの認証取得においてリスクアセスメントに基づく継続的な改善活動は必須とされている。そのため、GAP認証取得の全国的な普及において有効なツールとなる。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/iam/2018/iam18_s01.html
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カテゴリ |
安全管理
経営管理
大規模化
データベース
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