土壌菌体外酵素活性測定における多検体測定のための改良法

タイトル 土壌菌体外酵素活性測定における多検体測定のための改良法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究期間 2017~2018
研究担当者 坪井隼
田中拓未
山元季実子
北本宏子
発行年度 2018
要約 土壌酵素の活性測定において、評価に用いる土壌の量を任意の範囲内で正確に秤量すること、反応開始時の標準試料で基質の分解を抑えることによって、多検体を一度に精度よく測定できるように改良した手法である。
キーワード 土壌、菌体外酵素、活性測定、多検体同時測定、pNP誘導体
背景・ねらい 土壌微生物が分泌する酵素による有機物の分解は、土壌中の物質循環の初期反応として重要な役割を果たす。また、酵素活性は、特定の基質の構造を変化させる活性値として計測できるため、異なる地点から採取された土壌や、土壌への処理の違いなど、様々な検体間の生物性評価の指標として用いられる可能性が期待される。しかし、土壌試料の酵素活性評価は測定値のばらつきが大きく、平均値を求めるために土壌試料の点数を数多く用意する必要があった。また、実験中に基質の分解が進むため各処理区ごとに毎回、処理区と同じ重さの土壌を加えた標準試料を作成していた。これらの理由から操作に多大な時間と労力がかかるため、一度に測定できる試料数が限られていた。
そこで本研究では、pNP誘導体を基質とした土壌の菌体外酵素活性測定法を改良し、一度に多検体測定できる手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 反応容器を2mLプラスチックチューブから、96ディープウェルプレートに変え、試薬の分注にマルチチャンネルピペットを用いる(図1)。これにより、効率的な操作ができる。
  2. pNP基質と共に-80℃冷エタノールを添加し、従来常温で行っていた操作を冷却して行うことにより(図1)、反応液中のpNP基質の望まない分解を抑制できる(図2a)。その際、-80℃冷エタノールの添加では、土壌から測定を妨害する物質は溶出しない(図2b)。これにより、検体毎に標準試料を作製する必要が無いため、準備する土壌試料の数を減らすことができる。
  3. pNP-吉草酸エステル分解活性に基づく土壌のエステラーゼ活性を、2種類の土壌で調べた場合、反応に使用する土壌の量とエステラーゼ活性に正の相関が見られる範囲がある(図3)。この線形性が保たれている範囲であれば、任意の土壌量を使用しても、単位土壌当たり(例えば1g当たり)の土壌酵素活性を簡単な計算によって導くことができる。これにより、作業効率が上昇し、容易に土壌間の菌体外酵素活性を比較できる。
  4. pNP吉草酸エステルに限らず、他のpNP誘導体を使用して測定されるβ-グルコシダーゼ及びフォスファターゼも同様に測定可能である。
  5. 既存の方法に比べ、5~6倍の効率で生土の菌体外酵素活性の測定が可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 異なる地点から採取された土壌や、土壌への処理の違いなど、様々な検体間の生物性評価の指標として用いられる可能性がある。
  2. 開発した手法はpNP誘導体を用いる様々な土壌酵素活性測定に適用できることから、土壌における炭素、リンをはじめとしたいくつかの元素の循環を評価することが可能となる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2018/niaes18_s13.html
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