品種間差を考慮した作物の成長の安定性の高い予測手法

タイトル 品種間差を考慮した作物の成長の安定性の高い予測手法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究期間 2012~2018
研究担当者 櫻井玄
石郷岡康史
福山亮介
発行年度 2018
要約 広い地域で作物の成長を予測する場合に適した手法である。本手法はバイオマス全体との比から作物の葉のバイオマス割合を推定する。本手法により、広い地域で推定する場合などに、その地域の品種などの情報が分からない場合に安定性の高い推定ができる。
キーワード 葉バイオマス、安定性、作物成長モデル、広域予測、農水省グリーンエナジー計画
背景・ねらい 作物の成長を数理モデルを用いて広域で安定的に予測することは、気候変動が作物に及ぼす影響が懸念される中、将来の作物生産性を推定するために重要な課題である。一方で、作物の成長を精度良く予測するためには、各地域における品種情報など細かな情報をモデルに入力しなければならない。しかしながら、広域では様々な作物品種が栽培されており、どの作物品種用の作物モデルパラメータを利用するのかの判断は難しいし、モデルに当該品種のパラメータが準備されていない場合もある。そこで本研究では、既存の予測手法を複数比較し、予測対象地域の品種の情報が分からない場合に、作物バイオマスを予測する手法としてどのような手法が安定性が高いのかを比較し、明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 作物成長モデルでは、光合成産物が葉などに分配されることで作物の構造が決定される手法(パーティショニングタイプ)と作物の構造が作物全体に対する比として計算される手法(アロメトリータイプ)がある。アロメトリータイプの手法では、まず作物体全体のバイオマスが計算され、作物体全体に対する比として、葉や根のバイオマスが計算される。その比が作物の成長とともに変化するように定式化される。予測の誤差が積算されにくいため、例え品種が分からない場合でも、作物の構造を安定的に予測することができる(図1)。
  2. アロメトリータイプとパーティショニングタイプを比較した場合、品種の情報がない場合には、アロメトリータイプの方が予測安定性が高い(図2)。比較においては、アロメトリータイプとパーティショニングタイプとともに、モデルパラメータ(アロメトリータイプは葉・全体比、パーティショニングタイプは配分比)と成長度の関係をスプラインでモデル化し近似している。
  3. 品種が分からない状態でも安定性の高い予測をすることができるため、広域へのモデルの展開が容易になる。一つの応用例として、トウモロコシについての全球予測の適用例を図3に示す。
成果の活用面・留意点
  1. 安定的な手法の探索のために、日本における過去の長期・広域栽培試験データである農林水産省グリーンエナジー計画の成果資料をデジタル化し、解析に利用している。
  2. 本研究では、ダイズ、イネ、ムギについて、アロメトリータイプモデルが安定的であることを確認している。
  3. ただし、品種の情報がある場合(日本域の推定など)には、パーティショニングタイプによる予測がより詳細である。作物成長モデルのユーザーは、品種が分かる場合と分からない場合で、適切に作物成長モデルを使い分けることが推奨される。また、予測結果を閲覧・利用するのみのユーザーも、予測結果を適切に解釈することが必要である。
  4. 安定性比較のために利用されたデータは、農水省を中心として収集された、1950年から1981年の作物バイオマスデータであり、野外で継続的に複数の作物および品種、多数地点について、測定された資料である。本研究は、紙媒体で存在する過去の貴重なデータをデジタル化することで可能になったものであり、過去の「レガシーデータ」の活用事例でもある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2018/niaes18_s11.html
カテゴリ 大豆 とうもろこし 品種

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