フラワーアレンジメントの作成による高次脳機能障害者の記憶力向上

タイトル フラワーアレンジメントの作成による高次脳機能障害者の記憶力向上
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門
研究期間 2011~2018
研究担当者 望月寛子
山川百合子
発行年度 2018
要約 フラワーアレンジメントの作成作業を利用した認知リハビリテーションプログラム(SFAプログラム)を、高次脳機能障害者が繰り返し実施することにより、記憶テストの成績が向上し、その効果は3ヵ月間持続する。
キーワード SFAプログラム、高次脳機能障害、視覚性記憶、認知リハビリテーション
背景・ねらい 認知リハビリテーションプログラム(Structured Floral Arrangement Program:SFAプログラム)は、吸水性スポンジに付けた印に沿って花材を挿していくことにより、フラワーアレンジメントを作成する方法(特許第5201552号)(図1A)である。SFAプログラムを実施することにより、統合失調症患者の視覚性ワーキングメモリーの向上や(Mochizuki-Kawai et al.,2010)、外傷性脳損傷後における注意障害が改善する例を報告してきた(望月ら,2013)。今回は、SFAプログラムの認知機能へのさらなる効果を調べるため、不慮の事故や脳卒中により認知機能に障害を負った高次脳機能障害者を対象にSFAプログラムの臨床試験を行い、記憶障害の改善効果を検証する。
成果の内容・特徴
  1. 高次脳機能障害者16名(平均年齢43.8歳)を対象に、SFAプログラムを6回実施し、視覚性記憶力のテストを4回実施する(図1B)。テストでは、被験者は最初に原図を模写する。その後、被験者は原図を見ないで記憶を頼りに再び図形を描くことが要求される。被験者が描いた図形の正確性が0-36点で採点される(図2A)。
  2. SFAプログラム実施群の実施前のテスト平均得点は12.7点だったが、その得点は、SFAプログラムの実施回数に従って上昇し、4回目のテストでは23.3点と有意に増加する(P < 0.01、図2B)。一方、被験者と同時にテストを行った統制群(11名、平均年齢40.6歳)の得点には有意な変化は認められない。4回目のテストにおいて、SFAプログラム実施群の得点は、統制群に比べて有意に高い傾向を示す(P < 0.10、図2B)。
  3. SFAプログラム実施群16名のうち9名の被験者に対して3ヵ月後に同様の視覚性記憶テストを再度行なったところ、介入直後(4回目テスト)に行なった得点とほぼ同程度であることが示されている(図3)。SFAプログラムによって得られた記憶力の向上効果は、少なくとも3ヵ月間は維持される。
  4. 花材を色付きのスティックに換えてSFAプログラムを行った場合でも、同様の記憶力の向上効果が得られる。SFAプログラムの記憶力の向上効果は、印に沿って物を挿す行為によって得られる。生花の利用には、娯楽性を高め、リハビリテーションへの意欲を持続させる効果が期待される。
成果の活用面・留意点
  1. SFAプログラムの詳細については、農研機構のホームページで情報を公開している。(http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nivfs/research/amenity/index.html)。また、SFAプログラムに利用するフラワーアレンジメント資材は、生花店やインターネットで販売している。
  2. 高齢の高次脳機能障害者に対するSFAプログラムの実施法やその効果については今後検討する必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nivfs/2018/nivfs18_s10.html
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