高濃度ポリビニルピロリドン添加培養液は卵丘細胞が卵母細胞と連絡する突起を増やす

タイトル 高濃度ポリビニルピロリドン添加培養液は卵丘細胞が卵母細胞と連絡する突起を増やす
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2011~2017
研究担当者 平尾雄二
有富大輝
水町静華
佐々木邦明
松原和衛
発行年度 2018
要約 マウスの発育途上卵母細胞を体外発育させる際、高濃度ポリビニルピロリドンを培養液に添加して高分子クラウディングの状態にすると、栄養の補給路として卵丘細胞から卵母細胞に向かって伸びる突起の数が増加し、透明帯を挟んだ卵母細胞と卵丘細胞との接着も強くなる。
キーワード 高分子クラウディング、卵母細胞、顆粒膜(卵丘)細胞、体外発育、マウス
背景・ねらい 動物細胞用の培養液の開発は20世紀の中盤から大きく進展したが、高濃度の高分子化合物が細胞や組織に及ぼす影響については十分な検討がなされてこなかった。しかし最近では、培養液中で高分子が混雑した状態(高分子クラウディング)が培養細胞に及ぼす影響についての研究が増えつつある。
卵母細胞の発育にとって顆粒膜(卵丘)細胞との相互作用が極めて重要であることに着目し、培養液でその相互作用を補強することをねらって高濃度のポリビニルピロリドン(PVP、分子量360,000)を添加した結果、ウシ卵母細胞の発育が促進されることを明らかにしている。また、マウス始原生殖細胞から成熟卵子を作製する場合でも2%PVPの顕著な効果が確認している。体外での良好な卵子形成は、高分子クラウディングの組織培養における効果を明確に示した最初の例となったが、その機序については不明な点が多い。
そこで、マウスの卵母細胞を使うことにより、高分子クラウディングが卵母細胞と顆粒膜細胞に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 二次卵胞に含まれるマウス発育途上卵母細胞を10日間で体外発育させる場合、2%PVP添加区の卵母細胞が卵丘細胞層に包まれて回収されるのに対し、対照区では部分的に卵丘細胞が剥がれている場合がある(図1)。
  2. 卵母細胞の周囲には透明帯があり、卵丘細胞は突起(transzonal projections、TZP)を伸ばして卵母細胞に連絡するが、共焦点レーザー顕微鏡でTZPを構成するアクチンを視覚化すると2%PVP添加区の卵母細胞周囲には対照区よりも高い密度のTZPが観察される(図2)。
  3. 卵母細胞の外周100μmあたりのTZPの本数はPVP添加区において対照区よりも多い(図3)。
  4. 電子顕微鏡による観察では2%PVP添加区の卵母細胞と卵丘細胞は透明帯を挟んで密着しているのに対し、対照区の透明帯と卵丘細胞は密着していない(図4)。
  5. PVPによって体外発育卵母細胞の生存率が改善されることは既に知られていたが、連絡路であるTZPの増加が示されたのは初めてである。
成果の活用面・留意点
  1. 組織培養における高分子クラウディングの研究は緒についたばかりの段階であり、本成果は培養組織で効果を確認できる例として重要である。
  2. 他の細胞種では、高分子クラウディングが遺伝子発現レベルで細胞に影響を及ぼすことが報告されていることから、TZPの増加は卵母細胞の発育が改善される理由を構成する要素の一つであると考えられる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2018/nilgs18_s04.html
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