タイトル | 施設栽培の燃料消費を大幅に削減できる省エネルギー技術体系 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 | 2019~2019 |
研究担当者 |
河崎靖 松田周 川嶋浩樹 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 施設栽培において、水蓄熱装置と多層断熱資材を導入することで、冬季の暖房に係る燃料消費を大幅に削減することができる。削減の程度は、構築されたシミュレーションモデルによって栽培地域、施設の規模、暖房設定温度に応じた予測が可能である。 |
キーワード | 暖房、省エネ、水蓄熱、多層断熱資材、燃料消費シミュレーション |
背景・ねらい | 施設生産において暖房による光熱費は生産費全体の約2割を占め、燃料単価が高騰した場合は生産者の経営を圧迫することから、燃料費の消費を抑える省エネルギー型栽培技術の開発が求められている。加えて、今まで開発された省エネルギー栽培技術は、栽培地域や環境の変化に対応できない研究事例の積み重ねが多い。 そこで、本研究では水蓄熱装置と多層断熱資材(断熱性の素材を重ねた布団状の断熱資材)を用いた省エネルギー技術について、実際に燃料消費を大幅に削減可能であることを示すとともに、燃料消費に関するシミュレーションモデルを構築することで、栽培地域、施設の規模、暖房設定温度に対応した燃料削減効果を示す。 |
成果の内容・特徴 | 1.ハウス通路端等、作業を妨害しない位置に水蓄熱装置を設置する。水蓄熱装置は自動車用ラジエータとファンから成る熱交換機と耐候性・液体用フレキシブルコンテナバッグを用いた水槽で構成され、ポンプを用いて内部の水(容量700L)を循環させハウス内空気と熱交換し、昼間は集熱、夜間は放熱を行う(図1A)。 2.ハウス側面および天面に多層断熱資材を展張する。天面は傾斜・巻き上げ式とし、側面は巻き上げ機、直管パイプ、紐を組み合わせた巻き上げ式として、各巻き上げ機をタイマーで制御し展張・収納を行う(図1B、C)。 3.年間の燃料消費量は、PO内張のみ(慣行区)と比較し、水蓄熱装置、多層断熱資材およびPO内張の組み合わせ(省エネ区)では、およそ6割減少する(図2)。 4.燃料消費量の実測値および各種環境データに基づき、構築されたシミュレーションモデルは実用に足る予測精度を示している(図3)。これを用いることで各地域、暖房設定温度ごとの燃料消費予測が可能である(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.燃料消費の実測(図2)は西日本農業研究センター(香川県善通寺市)内のパイプハウス(床面積78m2、被覆面積198m2)で実施し、暖房期間は2019年11月6日~2020年4月24日、ハウス内ではミニトマトを栽培している。暖房設定温度は両区共通して12°C(11月6日~12月16日)、11°C(12月17日~1月3日)、および10°C(1月4日~4月24日)である。水蓄熱装置は9~15時に集熱、20~翌6時に放熱するようポンプをタイマーで制御し、多層断熱資材は屋外日射量がおよそ50W・m-2以下で展張するようにタイマーで制御している。 2.多層断熱資材をハウス天頂部に収納する場合、資材の影によりハウス内日射量が減少し収量が低下する。 3.燃料消費のシミュレーション(表1)は床面積1008m2、被覆面積1578m2のハウスを想定し、気象データ(外気温および屋外日射量)は2019年11月~2020年4月のアメダスデータ(善通寺のみ拠点内気象観測データ)を参照している。燃料消費量の予測は、外気温と暖房設定温度との温度差、地面からの熱移動、水蓄熱装置からの放熱を勘案したハウス内外の熱移動量に基づき算出する。なお、床面積当たりの地中伝熱量は条件によらず実測値を用い、省エネ区は側面および天面に多層断熱資材を展張し、水蓄熱装置8基を導入した場合を想定し、1基あたりの水蓄熱装置による放熱量は条件によらず実測値を用いている。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2020/warc20_s05.html |
カテゴリ | 環境データ 経営管理 栽培技術 施設栽培 省エネ・低コスト化 ミニトマト |