タイトル | 家畜の遺伝的パラメーターを高精度に推定できるNo-U-Turn Sampler法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 |
研究期間 | 2018~2019 |
研究担当者 |
西尾元秀 荒川愛作 |
発行年度 | 2020 |
要約 | No-U-Turn Sampler法は既存の手法にくらべて高精度に遺伝的パラメーターを推定できるため、家畜の遺伝的能力評価に有効である。 |
キーワード | No-U-Turn Sampler法、Gibbs Sampling法、遺伝的パラメーター、遺伝的能力評価 |
背景・ねらい | 家畜の遺伝的能力を評価するためにはあらかじめ当該集団の遺伝的パラメーターを推定することが必要である。繁殖形質等の遺伝率の低い形質においては、既存の手法では遺伝分散が過大推定されることが多く、高精度な推定法が求められている。近年、統計学の分野では、物理学の運動法則を利用してマルコフ連鎖モンテカルロ法のサンプリングを効率化させるNo-U-Turn Sampler(NUTS)法という新たな推定法が開発され、高精度な推定法として様々な分野で利用され始めている。そこで、本研究ではシミュレーションデータを用いてNUTS法による遺伝的パラメーターの推定性能を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1.既存の手法であるGibbs Sampling(GS)法に比べて、NUTS法ではサンプリングされた遺伝率の推定値の最頻値が設定した真の遺伝率に近い値となる(表1)。また、NUTS法はGS法よりも推定値のモンテカルロ標準誤差が小さく、推定精度が高い。 2.特に遺伝率が低い場合において、NUTS法によるサンプリングの軌跡はGS法よりも自己相関が低く、事後分布はほぼ左右対称の分布になるため、必要なサンプリング数は少ない(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.NUTS法は繁殖形質等の遺伝率の低い形質において有効な遺伝的パラメーター推定法である。 2.確率的言語プログラムStanではNUTS法が実装されており、簡単なプログラムコードでNUTS法を実行できる。 3.NUTS法を利用することで、豚の生時体重のばらつきなどを対象とした、既存の手法では扱えなかった複雑なモデルにおいても遺伝的パラメーターを推定できる。 4.NUTS法はパラメーターの推定に必要なサンプリング数は少ないが、1回のサンプリングに要する計算時間が長くなるため、必ずしもGS法より少ない計算時間でパラメーターを推定できるとは限らない。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2020/nilgs20_s05.html |
カテゴリ | 繁殖性改善 豚 |