プラスミドpMP19に起因するヨーロッパ腐蛆病菌の病原性

タイトル プラスミドpMP19に起因するヨーロッパ腐蛆病菌の病原性
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2013~2020
研究担当者 髙松大輔
中村佳子
奥村香世
原田真理子
岡本真理子
大倉正稔
発行年度 2020
要約 ミツバチの監視伝染病の原因菌であるヨーロッパ腐蛆病菌のうち遺伝子型別でCC3グループに分類される株の病原性は、これらの株が保有するプラスミドpMP19に起因する。本発見は、ヨーロッパ腐蛆病菌の病原因子を世界で初めて明らかにした成果である。
キーワード ミツバチ、ヨーロッパ腐蛆病菌、clonal complex 3、病原プラスミド、pMP19
背景・ねらい ミツバチの監視伝染病の原因菌であるヨーロッパ腐蛆病菌の株は、遺伝的に異なる3つのグループ(CC3、CC12、CC13)に分類することができ、CC12の株が最も強毒で、CC3の株がこれに次ぎ、CC13の株が最も弱毒である。属するグループにかかわらず多くの株は約20 kbpのプラスミドpMP19を保有する。このプラスミド上には殺虫毒素遺伝子に似た遺伝子(mtxA)が存在することから、pMP19が病原プラスミドである可能性が示唆されていた。しかし、pMP19やmtxA遺伝子がヨーロッパ腐蛆病発症に関与するのか否かについては、これまで実験的な検証は行われていない。
そこで本研究では、pMP19やmtxA遺伝子のヨーロッパ腐蛆病発症への関与をセイヨウミツバチ幼虫を用いた感染試験で検証する。
成果の内容・特徴 1.ヨーロッパ腐蛆病菌株のうち、CC3の株はpMP19を失うことによってセイヨウミツバチの幼虫への病原性が消失する(表1、図1)。すなわち、CC3の株の病原性はpMP19に起因している。
2.一方、CC12の株はpMP19を失っても幼虫に対する強い毒性が保持され(表1)、CC13の株はpMP19保有株であっても幼虫にほとんど病原性を示さない(表1)。すなわち、これらのグループの株は、CC3の株とは異なる病原因子や発病メカニズムを持つことが示唆される。
3.病原性を失ったpMP19脱落CC3株にmtxA遺伝子だけを導入しても幼虫に対する病原性は回復しないことから(図2)、pMP19による病原性の発揮には、mtxA遺伝子以外のプラスミド上の遺伝子が必要である。
成果の活用面・留意点 1.ヨーロッパ腐蛆病菌は発見されてから110年近く経つにもかかわらず、これまで実験的に証明された病原因子は見つかっていなかった。ヨーロッパ腐蛆病菌の一部の株についてではあるが、本研究により、世界で初めて本菌の病原因子の一つが明らかになった。
2.CC3の株の病原性発揮に必要なpMP19上の遺伝子とCC12株の病原性発揮に関与するゲノム中の遺伝子については、さらなる探索を実施中である。
3.今後ヨーロッパ腐蛆病に関する新たな病原因子が見つかれば、本病のより詳細な発病メカニズムが明らかになり、今回の知見と合わせて新たな防除法の開発につなげられる可能性がある。
図表1 244654-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2020/niah20_s28.html
カテゴリ 防除 ミツバチ

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