タイトル | Mycoplasma bovisの抗菌剤感受性低下に関わる点突然変異検出法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 | 2017~2019 |
研究担当者 |
秦英司 原田健弘 伊藤めぐみ |
発行年度 | 2020 |
要約 | 牛乳房炎原因菌であるM. bovisは、近年様々な抗菌剤に対する感受性低下が懸念されている。わが国のM. bovis抗菌剤感受性変化に関わる点突然変異を特定し、これら点突然変異を簡易迅速に検出可能な方法を開発することで、抗菌剤選択に要する時間を大幅に短縮できる。 |
キーワード | Mycoplasma bovis、乳房炎、抗菌剤、Hybridization probe、DNAシーケンシング |
背景・ねらい | Mycoplasma bovisは牛乳房炎の主要な原因菌の一つであり、強い伝染性を特徴とする。近年様々な抗菌剤に対する低感受性株が確認されており、治癒率低下への関与が推測される。感染症治療には有用な抗菌剤の選択が必要であるが、従来法では抗菌剤感受性の確認に2~3週間を要するため、簡易迅速な感受性判別方法の開発が求められている。 本研究では、昨年のM. californicumに引き続き、わが国で分離されるM. bovisについて抗菌剤感受性変化に関わる点突然変異を特定し、これら点突然変異をHybridaization probeを用いた一塩基多型解析ならびにDNAシーケンシングにより簡易迅速に検出可能な方法を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1.本検出法は、DNAサンプルの調整・準備、標的点突然変異を含むDNA領域のPCR増幅、Hybridization probeを用いた融解曲線解析による標的点突然変異の検出、DNAシーケンシングによって構成される(図1)。薬剤感受性変化に関わる点突然変異が存在した場合、融解曲線はピーク温度の低下あるいは二峰性曲線への形状変化を示し、市販の解析用ソフトウェアにより自動的に区別され、DNAシーケンシングによっても確認できる(図2)。 2.M. bovisにおけるテトラサイクリン系抗菌剤、スペクチノマイシン、マクロライド系抗菌剤、リンコサミド系抗菌剤の感受性低下に関わる点突然変異は16Sならびに23SリボソームRNA遺伝子(rrs、rrl)に存在し(表1)、融解曲線解析とDNAシーケンシングの何れの方法でも確認できる。一方、フルオロキノロン系抗菌剤の感受性低下にはDNAジャイレースとトポイソメラーゼ遺伝子(gyrA、parC)におけるミスセンス突然変異が共存する必要があり(表1)、この突然変異を確認するためには、DNAシーケンシングが必要となる。 3.本検出法に要する作業時間は最短で5、6時間程度であり、費用は1検体当たり1,300~1,700円程度である(図1)。 4.本検出法と令和元年度に公表した検出法を用いることで、国内で発生する牛乳房炎から分離される大部分のマイコプラズマについて薬剤耐性菌の解析が可能になる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.普及対象:家畜保健衛生所の病性鑑定施設、研究機関、大学、民間検査会社 2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:国内全都道府県 3.その他: ・実施手順のマニュアルを作成するとともに、非変異株であるM. bovis PG45TのDNA試料の提供に努める。 ・わが国における牛乳房炎の主要な原因菌であるM. californicumの薬剤感受性変化に関わる点突然変異検出については、令和元年度研究成果情報として公表している(https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2019/niah19_s03.html)。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2020/20_038.html |
カテゴリ | くり 耐性菌 薬剤 |