タイトル | 水稲作LCAにおいて農薬排出量をより精緻に算定するモデル |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター |
研究期間 | 2018~2019 |
研究担当者 |
湯龍龍 林清忠 稲生圭哉 Morten Birkved Sander Bruun 神山和則 志村もと子 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 単位量の農薬散布が、水田外の表層水、大気、地下1mへ排出される割合を推計するシミュレーションモデルである。これにより、農薬の環境影響を散布量で評価する従来のLCAに比べ、農薬の物理化学的性状、気象、水管理を考慮した環境中への排出量に基づくより現実に近い評価となる。 |
キーワード | LCA、農薬、排出割合、水田、水管理 |
背景・ねらい | 既存のLCAにおける農薬の環境影響評価は、散布量が全量環境中へ排出されると仮定して、農薬の影響評価係数に乗じて算定される。近年、欧州では畑作を対象とした農薬排出量推計モデルを開発し、散布された農薬が大気や土壌中での挙動(拡散、移動、分解など)を経て環境中に排出される量を推計して、農薬の影響評価に用いることよって、より現実に近い評価を実現している。しかし、そのモデルは水田での農薬散布を対象としていない。本研究は水田への単位量の農薬散布が、大気(fair)、圃場外の表層水(fsw)、鉛直深度1mより下の土壌(fvl)へ到達する割合を推計するシミュレーションモデルを開発する(図1)。 |
成果の内容・特徴 | 1.開発したモデルでは、単位量の農薬散布が一次分布である大気、稲沈着と田面水沈着に分けた後、二次分布において、稲沈着と田面水沈着後のそれぞれの挙動を推計する。全挙動項目は四つの排出割合(fair, fsw, fvl, flost)に集約され、その合計が1となる(図1、図2)。 2.一次分布の計算過程では、剤型(粒剤、液剤)と散布方法(手散布、ブームスプレーヤー、無人航空機)の違いを考慮している。二次分布の計算にあたっては、田面水沈着後の挙動は日ごとに推計するため、止水期間の考慮が可能である。また、畦畔の管理方法(慣行の畔塗、防水シート)によって、畔からの浸透速度の違いも考慮している。 3.殺菌剤イソプロチオランの評価結果(液剤、7月茎葉散布)を例示すると、表層水への排出割合が最も大きく、次いで大気、鉛直浸透の順となる(図3)。水田での水管理(止水期間、畔塗)は、表層水への排出に大きく影響するため、農薬排出量の削減において重要であることが確認できる。 4.本モデルで推計された表層水への排出割合は、既存文献において新潟県内の河川における農薬濃度の実測データから算定された当該農薬の河川への排出割合と比較したところ、妥当な結果であることが示唆された(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.本モデルの開発は、水稲作のLCAにおける農薬使用の環境影響をより精緻に実施することができるようになるため、総合的病害虫・雑草管理(IPM)などの導入による環境影響削減効果の推計に貢献できる。 2.本モデルに基づいて農薬の排出割合を算定するには、農薬の特性値のほか、散布時期、散布場所、剤型(粒剤、液剤)、散布方法(ブームスプレーヤーなど)、水管理方法(止水期間、畔塗)をインベントリデータとして収集する必要がある。 3.なお、モデルでは農薬が散布直後に大気、稲、田面水の三つの層に分配されると仮定しているため、移植の直前に育苗箱に処理する箱粒剤のように、農薬成分が直接土壌中に投入される場合の解析は今後の課題である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2020/niaes20_s11.html |
カテゴリ | 育苗 害虫 雑草 水田 水稲 農薬 水管理 |