カシューナッツ殻液給与によるライシン牛からのメタン排出量削減効果

タイトル カシューナッツ殻液給与によるライシン牛からのメタン排出量削減効果
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2017~2020
研究担当者 前田 高輝
鈴木知之
NGUYENVan Thu
LEVan Phong
NGUYENMinh Chon
山田桂大
工藤久志
吉田尚弘
疋田千枝
発行年度 2020
要約 ベトナム在来牛(ライシン牛)にカシューナッツ殻液を給与することにより、第一胃内のメタン生成古細菌等の微生物群集のメタン代謝に抑制的に作用し、第一胃由来メタン排出量をおよそ2割強削減できる。
キーワード メタン カシューナッツ殻液 反芻胃微生物群集
背景・ねらい 東南アジアでは今後畜産物の需要の増大が見込まれているが、反芻家畜は主要な温室効果ガス(GHG)排出源の一つであることから、メタンをはじめとするGHG排出を抑制する技術開発が急務である。ベトナムではカシューナッツの生産が盛んであり、その過程で副産物である殻が廃棄物として大量に処理されている。カシューナッツ殻の抽出液(CNSL: cashew nut shell liquid)には、メタン生成古細菌等の微生物群集のメタン代謝に対し抑制的な効果を持つアナカルド酸等の成分が含まれている。そこでCNSLを現地在来牛に給与することにより、反芻胃由来メタンの排出抑制効果が期待される。本研究は、第一胃(ルーメン)液中微生物群集及びその代謝機能に及ぼすCNSL給与の影響を明らかにし、現地未利用資源を有効に活用した温室効果ガス排出削減技術の開発に資する。
成果の内容・特徴 1.ベトナムにおいて一般的な肉用牛であるライシン牛(試験1: 体重246.1±22.6 kg、試験2: 同375.0±36.0 kg、n=4)の飼料にCNSL(試験1: 4 g/体重100 kg/日、試験2: 6 g/体重100 kg/日の割合で混合)を給与することにより、乾物摂取量あたりのメタン排出量は20.2~23.4%減少する(図1A、図1B)。
2.CNSL給与は、ルーメン液中微生物群集による有機物分解及び代謝経路に大きく影響を及ぼし、その結果として排出されるメタンのδ13C値に大きな変動が検出される(図1C)。
3.上記CNSL給与は、ルーメン液中の揮発性脂肪酸の一種であるプロピオン酸の相対濃度を上昇させる一方で(試験1:8.2%→10.6%, p=0.001; 試験2:17.7%→21.4%, p=0.015)、飼料消化率に影響を及ぼさない。
4.CNSL給与はルーメン液中のMethanobacteriales目に属するメタン生成古細菌の存在比を有意に低下させ(図2A、ピンクの帯)、多糖類の分解やプロピオン酸生成等に関与するPrevotellaceae科細菌の存在比を有意に増加させる(図2A、青の帯)。
5.ルーメン液中微生物群集の機能推定結果から、CNSL給与はメタン代謝を抑制するとともに、ルーメン液中微生物群集の炭水化物及び脂質代謝を促進していると推定される(図2B)。
6.CNSL給与はルーメン液中微生物群集の多様性を下げ、主要なメタン生成古細菌であるMethanobacteriales目に属する古細菌と密接な相関関係にある細菌種を変化させる(図2C)。
成果の活用面・留意点 1.ベトナムにおける肉牛反芻胃由来のメタン排出削減技術として活用できる。
2.CNSLを6 g/体重100 kg/日以上を給与してもメタン削減効果の増大は見込めず、逆に生産性を損ねる可能性があるため、適切な給与量について留意する。
図表1 244800-1.png
図表2 244800-2.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a01
カテゴリ ナッツ 肉牛 未利用資源

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