間断灌漑技術(AWD)によるライフサイクル温室効果ガス削減効果

タイトル 間断灌漑技術(AWD)によるライフサイクル温室効果ガス削減効果
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2019~2020
研究担当者 レオン 愛
南川和則
泉太郎
NGUYENHuu Chiem
発行年度 2020
要約 ベトナムのメコンデルタにおける間断灌漑技術導入(AWD)農家は、収量を維持しつつ、播種量、窒素施肥量、リン酸肥料施用量を減らし、ライフサイクル温室効果ガス(LC-GHG)を削減させる。
キーワード 間断灌漑技術 ライフサイクル温室効果ガス ベトナム・メコンデルタ
背景・ねらい ベトナム・メコンデルタでは、温室効果ガス(Greenhouse gas: GHG)排出量を抑制し、気候変動を緩和させる水稲作技術の一つとして、間断灌漑技術(Alternate wetting and drying: AWD)が導入されている。AWD導入による効果(GHGの一つであるメタン(CH4)削減、灌漑用ポンプ運転経費削減や収量増加等)は、国際農研とカウンターパートを始めとする多くの研究者により報告されてきた。一方で、AWD導入によるCH4と一酸化二窒素(N2O、GHGの一つ)とのトレードオフ、及び施肥管理等への影響も報告されている。しかし、これらが地球温暖化へ与える影響を包括的に考慮した評価はほとんど行われていない。本研究では、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用い、コメ栽培の播種から収穫までの資源消費量や排出物量を計算し、AWD導入によるライフサイクル温室効果ガス(LC-GHG)削減ポテンシャルを評価する。
成果の内容・特徴 1.ベトナム・メコンデルタ北部のアンジャン省において、AWD実施農家約100戸、未実施農家約100戸、合計200戸の農家を対象に、水稲栽培管理(播種量、機械稼働時間等)に関する聞き取り調査を行い、LCA手法による分析の基礎データとする。
2.水田土壌由来及び稲わら焼却に伴うGHG(CH4とN2O)発生量は、IPCC(2019)に基づき推定した。なお水田土壌由来CH4の計算には、水管理の寄与を表す係数としてAWD実施農家に0.55、未実施農家に1を用いた。その他、栽培日数、投入有機物の種類や量等は調査に基づく。
3.アンジャン省においてAWDを実施している農家では、水田土壌の酸化・還元状態が繰り返されるAWDの導入により、水田土壌由来のN2O発生量が増加する。また、カリ肥料の施用量も多い。しかし、播種量、窒素施肥量、リン酸肥料施用量、灌漑用ポンプ運転時間を減らしながら、収量を減らさず(図1)、土壌由来CH4を47%削減、土壌由来N2Oを17%増加、非土壌由来GHG(焼却とその他)を9%削減させる。LC-GHG排出量はAWD実施・未実施農家でそれぞれ9.82、16.6 t CO2-eq ha-1であり、AWDの実施により41%削減される(図2)。
4.AWD実施・未実施に関係なく、75%以上の農家で焼却が行われていたため、稲わら処理の違いがAWD実施・未実施農家の水田土壌由来CH4発生量の差へ及ぼす影響は小さい(図3)。
成果の活用面・留意点 1.本結果は、AWDのさらなる普及に向けた施策立案・実行の科学的根拠として用いることが可能である。
2.アンジャン省では、年間を通して稲が2 ~3回作付けされている。本結果は、夏秋作(早期雨季early wet)に基づくものであり、年間を通しての評価が必要である。
3.LC-GHG排出量を用い、AWD導入国におけるLC-GHG削減率が推定できる。
4.本研究で用いたLCA手法は、他の地域・国への応用が可能である。
図表1 244801-1.png
図表2 244801-2.png
図表3 244801-3.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a02
カテゴリ 肥料 栽培技術 水田 水稲 施肥 播種 水管理

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