衛星画像を使ってミャンマーの沿岸部の塩水遡上がモニタリングできる

タイトル 衛星画像を使ってミャンマーの沿岸部の塩水遡上がモニタリングできる
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 酒井徹
大森圭佑
OOAung Naing
ZAWYan Naung
発行年度 2020
要約 東南アジアの主要な農業生産地である大型河川のデルタ地帯では、塩水遡上が問題になっている。衛星画像から塩分濃度を直接推定することはできないが、河川水の電気伝導度と濁度との間の強い関係性から、間接的に塩分濃度と塩水遡上の季節的変化を推定できる。
キーワード 衛星画像 塩水遡上 海面上昇 ミャンマー デルタ地帯
背景・ねらい ミャンマーでは主食であるコメのほとんどが沿岸低地部のエーヤワディデルタで栽培されている。近年、気候変動による海面上昇の影響により、デルタを流れる河川や土壌内に海水が侵入する「塩水遡上」が問題になっている。塩水遡上の進行により収量の低下が引き起こされ、塩害により農地としての利用が困難な地域が増加している。そこで沿岸低地部の塩害対策を検討するためには、塩水遡上とその影響範囲の推移を適切に評価することが重要である。本研究では、衛星画像を使って、時々刻々と変化する塩水遡上を広域でモニタリングするための手法を開発する。
成果の内容・特徴 1.対象地域であるミャンマーのエーヤワディデルタにおいて、河川の濁度は上流部では高く、海に近い下流部で低い(図1)。これは、淡水の河川水は負に帯電する懸濁粒子同士が強く反発することによって茶色く濁るが、海水の進入で陽イオン(Na+なと)が混じると粒子間の反発力が失われ、懸濁粒子の凝集(フロック化)によって沈降速度を速めて堆積する結果である。実測した電気伝導度と濁度との間には、強い反比例の関係がある(図2a)。
2.衛星画像(Sentinel-2)から得られる緑色バンドの反射率は茶色く濁度が高いところで高い値を示す。よって、衛星画像によって、河川水の電気伝導度を間接的に推定することができる(図2b)。
3.雨が降らない乾季(12月から翌年3月まで)には、河川流量が低下するため塩水遡上が発生する。塩水遡上距離や速度は河川によって異なり、ピャマロウ川では約40 km、イエ川では60 km、パセイン川では80 km河口から内陸まで進行する(図3)。そのため、時空間変化パターンの大きい塩水遡上を、衛星画像を利用して把握することは効果的である。
4.塩分濃度が1 ppt(電気伝導度で1.56 dS m-1に相当)以上の河川水を水田に灌漑することは望ましくない(Driel and Nauta 2015)。衛星画像から作成した塩水遡上ラインマップを利用し、コメの栽培適地や播種時期を把握することができる(図4)。
成果の活用面・留意点 1.Sentinel-2衛星は、10日間隔でミャンマー上空を通過する。そのため、6時間毎に変動する潮汐の影響を考慮することはできないが、エーヤワディデルタのように潮位の干潮差が比較的小さいところでは、ゆっくりとした内陸への塩水遡上ラインの動きを捉えることができる。
2.作物の成長阻害などの塩害被害は事後に気づくことが多いが、衛星観測による塩水モニタリングにより、塩水がコメの栽培エリアに近づいたときにアラートを発して、農家が塩水侵入を防ぐための対策を事前に講じることができる。
3.本手法による電気伝導度の推定は濁度との関係に基づいている。濁度は、雨や風、潮位などによっても大きく変わる点に留意する。
図表1 244802-1.png
図表2 244802-2.png
図表3 244802-3.png
図表4 244802-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a03
カテゴリ くり 水田 播種 モニタリング

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