エチオピアの共有林維持管理には協力行動の意義に関する情報提供が欠かせない

タイトル エチオピアの共有林維持管理には協力行動の意義に関する情報提供が欠かせない
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 ETSAYHaftu
BERHEMelaku
NEGASHTeklay
鬼木俊次
発行年度 2020
要約 エチオピアティグライ州の農民は、エチオピア高原の共有地を利用しながら、保全するための協力行動を行っている。このような農民による共有林保全活動を持続的に行うためには、協力行動の意義に関する情報提供を行う必要がある。
キーワード 自然資源管理 協力行動 共有地 森林 エチオピア
背景・ねらい エチオピア高原にあるティグライ州の森林の多くは、村落が共同管理する共有林である。こうした共有林は、地域の農民が共同で石積みや保全溝の造成などの水土保全作業や植林作業を行うなど農民の共同作業負担によって維持されてきた(図1)。共同体の成員全員が無償で水土保全工を行うことによって共有林の植生が維持・改善され、農民はそこから家畜の飼料や薪木の採集をすることができる。しかし、近年はそうした共同体活動への参加率が下がりつつある。共有林の維持は、地域の農民が自発的に協力して植林や水土保全工などの作業を続けることができるかどうかにかかっている。本研究では行動経済実験により、共有林保全に資する協力行動の意義に関する情報提供が農民の協力行動を促すかどうか調べる。
成果の内容・特徴 1.ティグライ州東部の11村で無作為抽出した農民672人を対象に、8人のコミュニティー単位で、公共財ゲームとして知られる行動経済実験を行う。実験参加者が、共有林維持のために匿名の拠出を行うという設定で経済実験を10回(ラウンド)繰り返す。実験開始前に参加者に対しゲームのルールと拠出の結果に関する説明を行う。各参加者は共有地保全のための拠出として、実際に自分の所持金から現金を支払う。これはコミュニティーの他のメンバーに対する協力の程度を示す。共有地全体をプールして二倍にした金額を共有地保全による便益として各参加者に平等に分配する。5回目終了後に再び参加者に、ゲームのルールと協力行動によってどのような結果が生じるかについて情報提供を行い、さらに実験を継続する。
2.拠出額は5回目までは低下を続ける(図2)。情報提供の後、6回目には拠出額は1回目と同じ水準まで上昇し、その後の拠出額の低下は少なくなる(表1)。この結果は、この情報提供が協力行動による共有林の保全に対し長期的な効果があることを示す。
3.自然資源の保全意識は参加者個人の属性によって異なる(表2)。郡の中心地から遠い農家ほど拠出額は多く、村民に対する信頼度が高いほど拠出額は多い。市場との関係が薄い伝統的な農村の家ほどコミュニティーに協力的である。
4.各回の拠出額は、直前の回での他のメンバーの拠出額と正の相関がある(表2)。他のメンバーが拠出額を変えれば、次回の自分の拠出額はほぼ同じだけ変える。すなわち各参加者の協力行動は、他のコミュニティーメンバーの協力行動の影響を受ける。
成果の活用面・留意点 1.農民に森林保全活動に関して協力行動を取ることのメリットを伝えることにより、保全活動への参加意欲が高く継続する。セミナーや研修等の情報提供を主体とした機会を持つことが望ましい。
2.農民の協調性は、国・地域や民族、世帯特性や地理条件によって異なることに留意する。
図表1 244805-1.png
図表2 244805-2.png
図表3 244805-3.png
図表4 244805-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a06
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