ブラキアリアは株間土壌のアンモニア酸化古細菌を抑制し硝化速度を低減する

タイトル ブラキアリアは株間土壌のアンモニア酸化古細菌を抑制し硝化速度を低減する
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 中村智史
SARRPapa Saliou
安藤康雄
SUBBARAOGuntur Venkata
発行年度 2020
要約 ブラキアリア属牧草の栽培における硝化抑制効果は株間土壌においても確認でき、その硝化抑制作用はアンモニア酸化古細菌数の抑制によって生じる。株間土壌の硝化抑制効果は品種によって異なり、根圏分泌物に加えて根組織中の生物的硝化抑制活性が影響する。
キーワード ブラキアリア 生物的硝化抑制 BNI アンモニア酸化古細菌
背景・ねらい 現代農業においては作物収量を維持するための多量の窒素施用が必須であるが、その利用効率は高くない。窒素利用効率向上のため硝化抑制剤が用いられるが、高価な上、継続的に施用する必要がある。生物的硝化抑制(BNI)とは植物自身が硝化抑制物質を分泌し、その効果が発現するものであり、農業生態系における窒素利用効率の向上や環境負荷低減効果が期待されている。特に熱帯牧草ブラキアリアでは、硝化抑制物質としてブラキアラクトンが同定されるなど、BNI植物として多くの研究がなされているが、植物根分泌物の影響を直接的に評価する根圏土壌を対象にした研究が多く、また圃場でのBNI効果については報告事例が極めて少ない。またBNIの発現に関して、ソルガムではアンモニア酸化古細菌の抑制との関連が示されているものの(令和元年度国際農林水産業研成果情報A05「ソルガムの生物的硝化抑制にはアンモニア酸化古細菌の抑制が関連する」)、ブラキアリアでは解明されていない。一方圃場レベルでは、根圏に限らず株間を含む圃場全体を評価する必要があり、本試験では熱帯牧草ブラキアリア栽培における株間土壌の硝化速度の変化とそのメカニズムを明らかにする。
成果の内容・特徴 1.根圏分泌物のBNI活性の異なるブラキアリア属牧草7品種と対照区として裸地区を設定し、18ヶ月間、国際農研熱帯・島嶼研究拠点内圃場において栽培試験を実施した(図1)。調査した7品種のうち、Tupyは根圏分泌物のBNI活性が最も高く、Maranduは最も低い(表1)。
2.ブラキアリア栽培18ヶ月後の株間土壌(株間90 cmの中央、深さ0~30 cm)における硝化速度は品種によって異なり、調査した7品種の中では、Marandu、Mulato、Tupyの3品種は特に硝化速度が低いが(図2)、品種ごとの硝化速度の低下程度は各品種の根圏分泌物のBNI活性(表1)と必ずしも一致しない。根組織中のBNI活性を含めて重回帰分析を実施すると有意な回帰が可能となるため、根のターンオーバーによる組織中のBNI活性の影響が考えられる。
3.試験開始18ヶ月後の硝化速度は、土壌中のアンモニア酸化古細菌(AOA)のDNA量と正の相関が認められるが、アンモニア酸化細菌(AOB)のそれとは相関関係がない(図3)。このことから、AOA数の減少が硝化速度低下の原因である。
4.本試験はブラキアリアの株間で採取した土壌を対象としており、根圏土壌および株近傍においてはより強い硝化抑制が生じている可能性がある。
成果の活用面・留意点 1.ブラキアリア栽培後の耕地においては、後作物収量の増加が報告されており(Karwat et al. 2017)、ブラキアリアを活用した輪作体系の構築が期待される。
2.ブラキアリアにおける栽培期間中の総BNI活性量については、植物根分泌物の分泌量の季節変化や植物根のターンオーバーなどが影響するため、今後の検討を要する。
図表1 244808-1.png
図表2 244808-2.png
図表3 244808-3.png
図表4 244808-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a09
カテゴリ 環境負荷低減 ソルガム 品種 輪作体系

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