移植苗のリン浸漬処理はイネの施肥効率を改善し低温ストレスを回避する

タイトル 移植苗のリン浸漬処理はイネの施肥効率を改善し低温ストレスを回避する
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2017~2021
研究担当者 辻本泰弘
OOAung Zaw
川村健介
西垣智弘
RAKOTOARISOANjato Mickal
発行年度 2020
要約 少量のリン肥料を加えた泥を苗の根に付着させてからイネを移植するリン浸漬処理は、熱帯に広く分布するリン吸着能の高い土壌でも施肥効果が大きい。加えて、従来の施肥法に比べて生育日数を短縮するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では、登熟不良の改善にも効果をもつ。
キーワード リン浸漬処理 土壌リン吸着能 生育日数 低温ストレス マダガスカル
背景・ねらい サブサハラアフリカでは、肥料や土壌からの養分供給量が少なく、イネの生産性は著しく低い。特に、作物の三大栄養素の一つであるリンは、土壌中の存在量が少ないだけではなく、土壌中に多く含まれる鉄やアルミニウムの酸化物がリンを強く吸着するため、施肥をしてもイネに吸収されにくい問題がある。本研究では、こうしたリン吸着能が高い土壌でも、少ない肥料で効率的にイネ収量を改善できる施肥技術の開発を目指し、リン肥料を加えた泥を苗の根に付着させてからイネを移植するリン浸漬処理の効果を検証する。
成果の内容・特徴 1.移植時に、重過リン酸石灰を加えた粘着性の高い泥を苗の根に付着させることで、高塩濃度で生じる肥料焼けを回避しながら、溶液に浸すよりも多くのリンを株元に局所施用することができる(図1)。
2.リン浸漬処理により、イネの初期生育が無施肥条件に比べて大幅に改善される。浸漬リン濃度は1.8%~2.6%、浸漬時間は、2時間以内が望ましい(図2)。
3.リン浸漬処理は、株下の水溶性リン濃度を局所的に高めることができ、全層施肥で効果がみられないリン吸着能の高い土壌でも、イネのリン吸収と初期生育を促進する(図3)。
4.マダガスカルのリン欠乏圃場において、リン浸漬処理は、無施肥に比べて59~171%、表層施肥に比べて、同量もしくは半分のリン施肥量で9~35%、収量を増加させる(図4)。
5.リン浸漬処理は、無施肥に比べて2週間程度、表層施肥に比べて1週間程度、イネの到穂日数を短縮するため、生育後半の気温低下を回避し、低温ストレスにともなう登熟不良を改善する(図4)。
成果の活用面・留意点 1.農家の肥料投入力が乏しく、土壌のリン欠乏および生育後半の水不足や気温低下などが問題となる栽培環境において、イネの生産性を改善する実用的な技術として期待できる。
2.リン浸漬処理技術の汎用性を高め、普及を促進するためには、労働コストを含めた農家の受容性に関わる調査と技術の改良が必要である。
図表1 244812-1.png
図表2 244812-2.png
図表3 244812-3.png
図表4 244812-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_b02
カテゴリ 肥料 コスト 施肥

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