東南アジア熱帯雨林で重要な林業樹種におけるゲノム選抜育種導入の可能性

タイトル 東南アジア熱帯雨林で重要な林業樹種におけるゲノム選抜育種導入の可能性
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 谷尚樹
諏訪錬平
Sawitri
NA'IEMMohammad
Widiyatno
INDRIOKOSapto
内山憲太郎
津村義彦
発行年度 2020
要約 東南アジア熱帯雨林の重要な林業樹種(フタバガキ科樹種)を対象に遺伝子連関解析を行い、ゲノム推定モデルを構築することで、形質の評価に長期間を要していた林木の遺伝的な改良期間を短縮できる。とくに、成長に関して、連関するDNA多型と高いゲノム遺伝率が検出されたことから、成長に関するゲノム選抜が有効であることが示唆される。
キーワード 熱帯雨林 林業樹種 ゲノム選抜育種 ゲノムワイド連関解析 ゲノム遺伝率
背景・ねらい 東南アジアの熱帯雨林では、一定の基準に達した樹木だけを選んで択伐したあと、森林が自然回復した数十年後に次の収穫を期待する生産システムが一般的であったが、多くの地域では十分に回復が進まず、生産水準の低下が問題となっている。東南アジアで最も広大な熱帯雨林を有するインドネシアでは、伐採後の人工的な植栽による生産力の回復が求められているが、熱帯雨林産の林業樹種で種苗の遺伝的改良が行われた例はなく、遺伝的な改良を行った種苗を用いた植栽が可能になれば、熱帯雨林の回復、生産性の向上に大きく寄与する可能性がある。
近年、次世代シークエンサーの進歩によって、多数の個体からゲノムを広く網羅するDNA多型の検出が可能となり、ゲノム上のDNA多型情報から表現型を推定し、優良個体を選抜するゲノム選抜育種が可能となった。従来、その長寿命性のために表現型の評価に長期間を要していた林木において、実生の段階で将来の表現型をDNA多型情報から予測し、選抜を行うことは、育種サイクルの大幅な短縮につながる。そこで、優良な種苗による東南アジア熱帯雨林の森林再生、生産力の増強を効果的に行うために、東南アジア熱帯雨林の優占樹種であり、林業を含む多くの生態系サービスを提供するフタバガキ科樹種を対象に、ゲノム選抜育種の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.中央カリマンタンの天然林コンセッション企業内に設置されたフタバガキ科林業樹種の一つであるShorea platycladosの次代検定林において、77母樹の自然交配によって得られた356個体から、5,900遺伝子座とゲノム上の長い物理距離にわたる連鎖不平衡を検出したことから、本次代検定林は遺伝子連関解析やゲノム推定に適した集団であることがわかる(図1)。
2.ゲノム連関解析を行ったところ、間伐前の樹高(8年生)では、1遺伝子座が有意であったが、間伐後の樹高(11年生)、幹の直径成長や樹形、材密度では有意な遺伝子座は検出されず、これらの形質は多数の効果の弱い遺伝子によって制御されていることが示唆される(図2)。
3.ゲノム連関解析結果による遺伝子座の選抜は遺伝子型によって説明できる表現型の分散(ゲノム遺伝率)を向上させ(表1)、成長に関わる形質のゲノム遺伝率は樹形や材質よりも高いことから(表1)、成長の早い個体選抜・種苗生産を行う際に、とくに効果を発揮する。
成果の活用面・留意点 1.開発されたゲノム推定モデルを用いて、特に成長に関わる形質について実生の選抜を行うことで、育種サイクルの大幅な短縮につながる(図1)。
2.今回測定した形質は多数の効果の弱い遺伝子によって制御されていることが示唆されており、マーカー選抜育種には適さない。
3.深層学習の活用、解析個体数や遺伝子座の増加がゲノム推定モデルの精度向上に有効である。
図表1 244828-1.png
図表2 244828-2.png
図表3 244828-3.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_c06
カテゴリ 育種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる