地域への愛着や対策効果の期待感が低い住民はサル対策に消極的な傾向がある

タイトル 地域への愛着や対策効果の期待感が低い住民はサル対策に消極的な傾向がある
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2008~2021
研究担当者 中村大輔
竹内正彦
発行年度 2021
要約 サル被害に悩む住民を対象に、ゴミや放棄果樹等への管理意欲に関わる要因を把握するために災害対策準備行動の分野の理論を応用する。対策意欲は住宅の被害リスクや対策への期待感が低いほど低減し、地域への愛着が低いほど対策への期待感が低いことが示唆されている。
キーワード 獣害対策、ニホンザル、災害対策準備行動、地域への愛着
背景・ねらい 近年、野生動物の個体数増加・分布拡大に伴い、住宅地などにおいても獣類の出没や被害の報告数が増加している。被害に対して、効果的な対策等は報告されているものの、住民が効果的な対策をおこなうとは限らない状況があり、その要因は明らかになっていない。
そこで、本研究では10年以上深刻なサル被害に悩まされる住宅地の住民を対象に、サル誘引物管理への意欲に対する要因を把握する。そのため、災害対策準備行動の分野で対策準備行動に関わる要因として指摘されている被害リスク、地域への愛着、対策効果への期待の3つの要因と対策行動に消極的な考え方との因果関係を明らかにすることで、住民の管理意欲向上に資することを目的とする。
成果の内容・特徴 1. 本成果は、獣害対策意欲に関わる住民の行動分析のために、災害対策準備行動の分野で既報である被害リスクや地域への愛着、対策の効果に対する期待感といった要因を応用して分析する点が特徴である。サルの生態調査結果による客観的指標と、回答者の住宅位置が判別可能なアンケートによる住民の主観的指標を一つのモデルとして構造方程式モデリングにより解析することで、被害リスクと住民意識の因果関係を探る。
2. 分析に用いたデータについて、アンケート実施から前1年分の加害サル群の行動追跡(n= 141)から得られた位置情報を元にした固定カーネル法により推定した加害サルの利用分布から得られた値を被害リスクとする(図1)。被害リスク推定により0以上の値の地域に居住する住民をアンケートの対象者(n = 710)とし、その回答率は44%(314/710)である。アンケートにより複数の質問項目から構成される潜在変数を「地域への愛着」、「対策の効果に対する期待感」、「対策に消極的な考え方」と設定する(表1、図2)。変数間の因果関係は災害対策準備行動分野の既往研究によるものである。
3. 解析の結果、地域への愛着が少ない住民、被害リスクが低い住宅に住む住民(図1で青い点付近の住民)、対策効果に期待していない住民ほど対策行動に消極的な考え方をしている(図2)。
4. 災害対策準備行動の分野では、災害リスクが地域への愛着に影響を及ぼすケースが多く報告されているが、本調査地においては、長期間サルの被害に悩まされているにもかかわらず地域への愛着を低減させる要因としては成立していない(図2)。地域への愛着へ与える影響については、他獣種(サル以外)についても検討を要する課題である。
成果の活用面・留意点 1. 本成果により、住民の鳥獣害対策への行動意欲には地域への愛着が重要な因子となることが判明したため、農地や生活圏への鳥獣の侵入防止のみではなく、地域創生といった広い視点の確保が鳥獣害対策の期待の高まり、そして対策意欲に影響することが示唆される。
2. 解析の要因として用いた「地域への愛着」は機能的な愛着(駅から近い、便利等)ではなく感情的な愛着(好ましい、誇らしい)といった意識で構成されている。
図表1 248927-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nilgs/2021/nilgs21_s17.html
カテゴリ 鳥獣害

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