タイトル | 養豚場の排水処理を省エネにするスマート曝気制御技術 |
---|---|
担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 |
研究期間 | 2015~2021 |
研究担当者 |
横山浩 山下恭広 荻野暁史 水口人史 伊藤和紀 松井敏也 佐藤義則 高橋一寿 鎌田孝治 長峰孝文 五十嵐宏行 長谷川輝明 林田雄大 鶴田勉 大川夏貴 芝田晃一 森弘 柴田翔平 甲斐敬康 二宮恵介 鈴木直人 片桐慶人 細井伸浩 |
発行年度 | 2021 |
要約 | BOD(生物化学的酸素要求量)を迅速に測定するBOD監視システムを使用して、多量の電力を消費する浄化槽の曝気を必要最小限に制御する。これにより曝気にかかる消費電力量を最大で約32%削減でき、電気代を肥育頭1000頭あたり月々1.3万円節約できる。 |
キーワード | 省エネ、BOD監視システム、曝気制御、養豚排水処理、温暖化ガス排出削減 |
背景・ねらい | 養豚場の排水処理施設では、浄化槽に大量の空気を送り込むこと(曝気)で排水を浄化している。曝気には多くの電力が必要で、ランニングコストの約半分を占める。BODは水の汚れの一般的な指標である。豚舎から出る排水のBOD値は日々変動するため、排水処理施設では高濃度のBOD排水が投入されても処理できるように、長い曝気時間(制御無し)で運転されている。このため、低BOD排水の場合は曝気が過剰となり、電力が無駄に消費されている。そこでBOD値に応じた曝気量の制御が望まれるが、従来法によるBODの測定では5日間もの長い測定時間が必要なために実施が困難であった。我々は発電細菌を利用してBODを6時間で測定できる「BOD監視システム」を開発した(2018年普及成果情報)。本研究ではBOD監視システムを用いて新たな排水処理技術を開発する。近年、畜産業に対する窒素(硝酸性窒素等)の暫定の排水基準が強化されている。排水から窒素を除去する際にもBODの最適化が必要なため、本システム導入による浄化機能の促進も期待できる。 |
成果の内容・特徴 | 1. BOD監視システムによる曝気制御は、間欠曝気における1日あたりの曝気時間の長さを、BOD値に応じて自動で最適化(スマート化)する初めての技術である。BOD(処理水槽)とpH(曝気槽)を1日に1回測定して、排水処理施設の送風機(ブロワー)をOn/Off駆動させる(図1)。例えば、測定したBODの値が目標値よりも高い場合、BODを下げるために現状よりも曝気時間を増やす。BODとpHが低い場合、曝気が過剰なので曝気時間を短縮する。これを毎日繰り返すことで、過度な曝気が抑えられ省エネ化が図られる。間欠曝気の最適化により窒素も同時に除去できる。 全国5箇所の排水処理施設(表1)で実証試験を行った結果、全ての施設で省エネ効果が示された。曝気時間の削減効果は、①排水の負荷が低い、②処理時間が長い、または、③曝気制御前の曝気時間の設定が長い施設ほど大きくなる(表2、図2)。曝気時間は平均で32%削減され、電気代は肥育豚1000頭あたり1.3万円/月節約できた。本システムの導入費用を250万円と仮定すると、肥育頭5,000規模の農場の場合、3年半程度で回収できる(消耗品代込)。節電による間接的な温室効果ガスの削減量は、5.2 t-CO2/年/1000頭になる。 処理水の水質は曝気制御の実施前と後で変化はなく、BODは30 mg/L以下、窒素は一般排水基準100 mg/L以下であり、良好な水質が得られた。一部の施設では曝気制御により窒素の除去が促進される効果が観察された。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 普及対象:養豚の排水処理施設。 2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の排水処理施設を持つ養豚経営。 3. その他:BOD監視システムは山形東亜DKKより入手できる。本システムの導入には、排水処理施設が適正に運転管理されている必要がある(BOD容積負荷が0.3 kg/m3/日以下など)。窒素の一般排水基準のクリアには、排水のBODと総窒素の比が3以上必要である。本システムの性能維持には、IoT等を使い発電細菌の状態を適正に保つ必要がある。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nilgs/2021/21_002.html |
カテゴリ | 経営管理 コスト 省エネ・低コスト化 豚 |