タイトル | ハチミツ由来菌のマクロライド耐性プラスミドはアメリカ腐蛆病菌を予防薬耐性化する |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 |
研究期間 | 2017~2021 |
研究担当者 |
岡本真理子 高松大輔 金森裕之 熊谷真彦 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 国産ハチミツにはアメリカ腐蛆病予防薬であるマクロライド(タイロシン)に低感受性を示す菌が多数混入しており、マクロライド耐性遺伝子ermCを載せたプラスミドを保有する菌も存在する。このプラスミドを獲得したアメリカ腐蛆病菌は、アメリカ腐蛆病予防薬に耐性になる。 |
キーワード | ミツバチ、タイロシン、アメリカ腐蛆病菌、マクロライド耐性菌、薬剤耐性プラスミド |
背景・ねらい | アメリカ腐蛆病菌はミツバチの監視伝染病であるアメリカ腐蛆病の原因菌である。日本では予防薬としてマクロライド系抗生物質であるタイロシンの使用が承認されている。タイロシンは我が国の養蜂業で使用できる唯一の承認予防薬であることから、本病を効果的に予防していくためには、タイロシン耐性アメリカ腐蛆病菌を発生させない予防薬の使用法が重要となる。ミツバチが生産するハチミツにはハチたちが生息環境から持ち込んだ多様な細菌が混入している。このような多様なハチミツ混入菌はさまざまな薬剤耐性遺伝子を持つ可能性があり、アメリカ腐蛆病菌が薬剤耐性遺伝子を獲得する経路として、ハチミツ混入菌からの伝達が危惧されている。本研究は、国産ハチミツに潜むタイロシン耐性菌を探索し、今後、国内のアメリカ腐蛆病菌がタイロシン耐性化する可能性とそれに関与するかもしれない耐性遺伝子を調査することを目的とする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 市販の国産ハチミツ53種類を材料に、タイロシン添加寒天培地で菌分離を行なったところ52菌種209株のハチミツ混入菌が分離された(図1A)。そのうちの94.3%の株が国内のアメリカ腐蛆病菌株よりもタイロシンに低感受性を示すことから(図1B)、タイロシン低感受性菌は国内のミツバチの生息環境に広く存在することが示唆される。 2. 国産ハチミツ混入菌の中にはマクロライド耐性遺伝子(ermC)を載せた可動性プラスミドpJ18TS1macを保有する菌が存在する(図1C)。 3. pJ18TS1macを人工的に導入したアメリカ腐蛆病菌はタイロシン耐性化し、タイロシンの最小発育阻止濃度が0.25 μg/mlから16 μg/mlまで上昇する(図1D)。さらに、導入したプラスミドは薬剤の選択圧がなくても長期にわたってアメリカ腐蛆病菌に保持される。 4. すなわち、国産ハチミツ中にはアメリカ腐蛆病菌を予防薬耐性化する可能性のある薬剤耐性遺伝子が存在する。そして、薬剤耐性遺伝子の獲得により予防薬の有効性が一度失われてしまうと、その有効性を取り戻すことは容易ではなくなることが示唆される。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 今後、ハチミツ中のマクロライド耐性遺伝子(特にermC遺伝子)の有無を検出する検査法を開発することで、アメリカ腐蛆病菌が予防薬耐性化するリスクをあらかじめ予想し、より慎重かつ適切に予防薬を使用することが可能となる。その結果、アメリカ腐蛆病予防薬をより長く有効に使うことが可能となる。 2. タイロシン耐性アメリカ腐蛆病菌のさらなる発生リスク評価のため、全国から収集した国産ハチミツ中にアメリカ腐蛆病菌およびermCがどの程度分布しているか調査中である。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s17.html |
カテゴリ | 耐性菌 ミツバチ 薬剤 薬剤耐性 |