豚熱ウイルスの野外流行時における遺伝子変異の特徴

タイトル 豚熱ウイルスの野外流行時における遺伝子変異の特徴
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2018~2020
研究担当者 西達也
深井克彦
加藤友子
澤井宏太郎
山本健久
発行年度 2021
要約 豚熱ウイルスに起こる遺伝子変異の特徴として、タンパクの機能に影響しない部位の変異は引き継がれやすいが、ウイルスの増殖に必要な酵素を規定する非構造タンパク質での変異は引き継がれにくい。これらの知見は診断法やワクチン、抗ウイルス剤開発の一助となる。
キーワード 豚熱ウイルス、フルゲノム解析、ゲノム変異
背景・ねらい 豚熱(CSF)は国内で26年振りとなる発生が2018年に確認され、飼養豚と野生イノシシの間で流行が続いている。CSFウイルスを含むRNAウイルスはゲノム複製時における変異率が高く、感染を繰り返すうちに塩基置換をランダムに蓄積する。一方で、ウイルスの増殖に必要な性質が失われた変異体は淘汰されるため、野外の流行におけるウイルスゲノムの変異には一定の制限がある。本研究では、日本の発生例から分離された豚熱ウイルスのゲノムを比較解析して野外流行時におけるゲノム変異の特徴を解明することを目的とする。
成果の内容・特徴 1. 次世代シークエンサーを用いて、2018年以降に国内の豚およびイノシシから検出されたCSFウイルス150株のゲノム全長配列を決定した。CSFウイルスの全長遺伝子は4つの構造タンパクおよび8つの非構造タンパクをコードする(図1)。
2. 150株間の比較で確認された置換は2株以上に引き継がれた置換(共有置換)と、1株でのみ確認された置換(非共有置換)に分類できる(図2)。
3. 全ゲノムのタンパク規定部位(ポリプロテイン)ごとに比較すると、ウイルス増殖に必須の酵素タンパクを規定するNS3は塩基置換率が最も低く(図2)、アミノ酸置換を伴う変異の割合(dN/dS比)も最も低い(図3)。また、NS3タンパクの構造安定化を担うNS4Aでの共有置換は1つも見つかっていない。これらの非構造タンパク領域では、ウイルスの増殖に不利な変異を排除する選択圧によって、保存性が高くなっていると考えられる。
4. 構造タンパクおよび分泌タンパクを規定するErnsではアミノ酸置換を伴う変異が引き継がれやすい(図4)。この領域を翻訳して作られる分泌タンパクの共有置換部位は、立体構造上でタンパクの機能(RNA分解活性)に影響がない外縁部に位置する。
成果の活用面・留意点 1. 野外の流行におけるウイルスの変異の特徴を解明することで、ウイルスが伝播するために柔軟に変異させている領域と変異が制限されている領域を特定することが出来る。これらの知見は診断法やワクチンおよび抗ウイルス剤開発の一助となる。
図表1 248962-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s08.html
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