わが国で分離された牛コロナウイルスの分子疫学的特徴

タイトル わが国で分離された牛コロナウイルスの分子疫学的特徴
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2019~2020
研究担当者 鈴木亨
大竹祥紘
内本智子
長谷部文子
五嶋祐介
発行年度 2021
要約 国内外で分離された牛コロナウイルス152株について外皮タンパク質の分子疫学的解析を実施すると、国内分離株は全て北米グループに分類され、さらに時間経過に伴い変異を繰り返している。新たな変異株の出現に備えて生産現場の防疫対策を強化する必要がある。
キーワード 牛コロナウイルス、外皮タンパク質、分子疫学
背景・ねらい 牛コロナウイルスは世界中に分布しており、牛の用途や年齢に関係なく、毎年下痢や呼吸器病などの集団発生を引き起こし、農場に甚大な被害をもたらしている。牛コロナウイルスの外皮タンパク質は病原性や抗原性に深く関与していることから、その遺伝子情報は各国内での流行ウイルスの変異状況を解析するために活用されている。しかしながら、近年のわが国における流行ウイルスの変異状況について、外皮タンパク質遺伝子を用いた体系的な調査はほとんど実施されていない。さらに、これまで発生諸国間における流行ウイルスの疫学的関連性を調査した成績もほとんどないため、ウイルス株の侵入経路や伝播の実態は不明のままである。そこで、本研究では国内外で分離された複数株の外皮タンパク質遺伝子情報を活用してわが国における分離ウイルス株の特徴や変異実態を明らかにするとともに、ウイルスの侵入経路や伝播の実態を解明するための国内外株間の疫学的関連性を調べる。
成果の内容・特徴 1. 国内で下痢または呼吸器症状を呈した牛から分離されたウイルス68株について、次世代シーケンサーを用いて外皮タンパク質遺伝子の全長を解読し、国内分離株の変異実態を明らかにする(図1)。
2. 上述の結果にデータベースから収集した国外検出84株の同遺伝子情報を加えた計152株を用いた分子疫学的解析を実施すると、世界中に分布する牛コロナウイルスは欧州グループと北米グループに大別され、近年日本で分離されたウイルス株は全て北米グループに分類される(図2)。
3. これらのウイルス株は下痢や呼吸器の臨床症状ではなく、採取された年や地域に応じてグループ分けされ、加えて国内分離株は時間経過に伴い変異している。
成果の活用面・留意点 1. 本研究で得られた外皮タンパク質の遺伝子情報は現行のワクチン株との交差中和試験などを用いて抗原性を比較することで新たなワクチン候補株の選定に活用できる。
2. 国内外の牛コロナウイルス株の疫学的関連性が明らかになったことにより、国外株の侵入や世界各国への伝播状況を把握することが可能となる。
3. 国内分離株は年々変異を繰り返し病原性や抗原性を変化させていることから、生産現場における衛生管理の徹底やワクチン接種の励行等を強化して、新たな変異株の出現を抑える必要がある。
図表1 248969-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/niah/2021/niah21_s01.html
カテゴリ データベース

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