タイトル | 水田でのメタン発酵消化液の施用によるメタン排出促進は間断灌漑で相殺できる |
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担当機関 | (国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 2019~2021 |
研究担当者 |
南川 和則 宇野 健一 HUYNH Cong Khanh TRAN Sy Nam NGUYEN Huu Chiem |
発行年度 | 2021 |
要約 | ベトナム・メコンデルタの水稲三期作において、メタン発酵消化液の肥料利用と間断灌漑の組み合わせは、現地慣行である化学肥料と常時湛水の組み合わせと比較して、水稲収量を減らすことなくメタン排出量を11~13%削減できる。 |
キーワード | 気候変動緩和策 水田 間断灌漑 循環型農業 耕畜連携 |
背景・ねらい | ベトナムにおいて普及している家畜糞を原料とする小規模バイオガス生産とその家庭内利用は、窒素等の植物養分を多く含む廃液(メタン発酵消化液)が未処理のまま水系へ排出されるために、水質汚染等の地域環境問題を引き起こしている。その解決策として、消化液を現地の主要作物である水稲の肥料として利用することは有効であるものの(令和元年度国際農林水産業研成果情報A01「水稲の葉色に基づく施肥設計はメタン発酵消化液の肥料利用でも有効である」)、消化液には分解されやすい有機物が含まれることから、土壌からのメタン(CH4)排出を増加させる恐れがある。そこで、間断灌漑を組み合わせることで、このCH4増加を相殺できると仮説立てて、メコンデルタの水稲三期作における農家圃場での観測から、その効果を検証する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 牛糞を原料とする消化液の有機物含量等の性質は作期間で異なるが、その施用により、化学肥料に比べてCH4排出量は三作の平均で19%増加する(図1)。 2. 現地は起伏の少ない低地のため自然落水が困難であるが、日本型の中干し+日数を指標とした間断灌漑(MiDi)や田面水深を指標とした間断灌漑(AWD)実施下での落水日数が多いほど、CH4排出量は低下する(図2)。 3. 現地慣行の化学肥料と常時湛水の組み合わせに対して、提案する消化液と間断灌漑の組み合わせは、籾収量やわら収量を減らすことなく、 CH4排出量を11~13%、一酸化二窒素(N2O)排出量を35~54%それぞれ削減できる(図3)。CH4とN2Oの合計排出量をCO2等価に換算した地球温暖化係数(GWP)や、GWPを籾収量で除して求めた収量あたりGWPも、消化液と間断灌漑の組み合わせによって削減できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本成果は、家畜糞を原料とする消化液を肥料利用する他の水稲作地域にも適用できる。 2. 排水が良好な圃場立地ならば、間断灌漑によるCH4排出削減効果は高まる可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_a01 |
カテゴリ | 肥料 水田 水稲 施肥 メタン発酵消化液 |