オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす

タイトル オイルパーム古木の慣例的農地還元は土壌環境に負の影響を及ぼす
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2019~2021
研究担当者 鵜家 綾香 
小杉 昭彦 
CHUAH Jo-Ann 
SUDESH Kumar 
ABIDIN Nur Zuhaili Harris Abidin Zainal 
 HASHIM Zulkifli 
発行年度 2021
要約 オイルパーム古木の慣例的農地還元による影響を確認するために、パーム古木繊維を混合した土壌で植物栽培を行った結果、生育不良や土壌に糸状菌Trichocladium属菌が有意に増殖する。パーム古木繊維の直接的な農地還元は土壌環境に負の影響を与える。
キーワード オイルパーム幹 農地還元 窒素欠乏 土壌環境 Trichocladium属菌
背景・ねらい 世界で最も消費される植物油脂「パーム油」の原料である果房は、マレーシアやインドネシアのパーム農園で栽培されるヤシ科の植物であるオイルパームから収穫される。オイルパームは、栽培年数と共に、その果房の生産量が低下することから、25年周期で伐採され、植替えられる。伐採されたオイルパーム古木(OPT)は、農園への肥沃度向上に効果があるとされ、細かく裁断し放置した後、新しいパーム苗木の再植時に慣例的に農園に施肥することで農地還元している。しかし、OPT繊維は分解されず、長期間土壌に残り続けることから、果たしてその慣例的農地還元が土壌の肥沃度向上に繋がるのか科学的知見は少ない。そこで本研究では、植替え前に、OPT繊維が施肥されたと想定した土壌をモデルとして作出し、苗木の生長期間中(3年間)に間作作物として栽培されるトウモロコシ、トマト、ダイズ栽培を例に、OPT繊維が直接農地還元された際の植物生長や土壌環境にどういった影響を与えるかについてモデル的に検証を行った。
成果の内容・特徴 1. OPT繊維を混在させた土壌(OPT区: 5 g/100 g土壌)で栽培したトウモロコシ、トマト、ダイズはすべて生育不良となる。OPTを含まない土壌(標準区)で生育したトウモロコシ、トマト、ダイズと比較すると、それぞれの植物体の高さは、27.6%、35.9%、54.9%、葉緑素量(SPAD値)は、58.8%、35.5%、48.9%、乾物重量は、52.5%、53.3%、42.8%の減少を示す(図1)。
2. OPT区で栽培したすべての植物体では、窒素欠乏症状である黄化や、マグネシウム欠乏症状である葉脈透過が認められる。植物体地上部の元素分析から、OPT区で栽培したすべての植物体で、窒素及びマグネシウムの欠乏が生じる(表1)。
3. 窒素及びマグネシウム欠乏の原因を検討するため、栽培後の標準区とOPT区の微生物叢を比較したところ、根圏糸状菌であるTrichocladium属菌が有意に増殖する(図2)。
4. OPT繊維の主成分であるセルロースの混在土壌(セルロース区)の場合、OPT区と比較しTrichocladium属菌の検出量は低く、目立った増殖は認められない(図2)。このことは、OPT繊維の土壌還元により、特異的なTrichocladium属菌の増殖を引き起こすことを示唆している。Trichocladium属菌は、根腐病を引き起こすとされるFusarium oxysporumと同症状を誘発するとの報告があることから、土壌環境に負の影響を与える可能性がある。
成果の活用面・留意点 1. OPT繊維によるTrichocladium属菌の特異的増殖を示した初めての報告であり、Trichocladium属菌の植物病理学的知見を明らかにすることで、パーム農園管理改善への知見となる。
2. OPTの農地還元の仕方により土壌に与える影響は異なる可能性がある。
図表1 249152-1.png
図表2 249152-2.png
図表3 249152-3.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_a03
カテゴリ コスト 施肥 大豆 とうもろこし 土壌環境 トマト 根腐病

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