少ない窒素肥料で高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)強化コムギの開発

タイトル 少ない窒素肥料で高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)強化コムギの開発
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2021~2025
研究担当者 Subbarao Guntur Venkata
岸井 正浩 
BOZAL-LEORRI Adrian 
 ORITZ-MONASTERIO Ivan 
GAO Xiang 
ITRIA IBBA Maria 
KARWAT Hannes 
GONZALEZ-MORO M. B. 
GONZALEZ-MURUA Carmen 
吉橋 忠 
飛田 哲
KOMMERELL Victor
BRAUN Hans-Joachim
岩永 勝
発行年度 2021
要約 高いBNI能を持つ野生コムギ近縁種であるオオハマニンニクとの属間交配により、多収品種にBNI能を付与したBNI強化コムギを開発できる。BNI強化コムギは、土壌中のアンモニア態窒素の硝化を遅らせ、その土壌中濃度を向上させ、低窒素環境でも生産性が向上する。BNI強化コムギの活用により、窒素肥料の損失に伴うN2O排出による地球温暖化の緩和と水質汚濁物質の削減が期待できる。
キーワード コムギ 生物的硝化抑制 野生コムギ近縁種 アンモニア態窒素 窒素利用効率
背景・ねらい 近代農業は、工業的に固定した窒素を農地に投入することを基盤としている。しかし、アンモニア態窒素として投入した窒素の過半は、作物に利用されず農地外へと溶脱・流出している。窒素の損失の多くは、土壌細菌による硝化を原因としており、生成物の硝酸態窒素は、水圏環境の悪化を引き起こすと共に、その後の窒素循環によりCO2の298倍の温室効果のあるN2Oが生じる。植物が根から硝化を抑制する物質を分泌し、土壌窒素の溶脱を防ぐBNIは、熱帯牧草の機能として2009年に世界に先駆けて国際農研が証明し、作物への展開が期待されている。BNIを食料システムに応用することで、窒素を土壌に留め、作物の窒素利用効率を向上させることが出来る。これにより、少ない窒素投入で高い生産性を確保できると共に、窒素の損失に伴う環境汚染を低減でき、地球温暖化の緩和に繋がる。コムギは三大作物の1つで、世界で最も広く栽培されると共に、最も多くの窒素が投入される作物であるが、BNI能の高い品種は現在まで見出されていない。このため、高いBNI能を示す野生コムギ遺伝資源の活用によるBNI能の強化により、生産力向上と持続性の両立を図る。
成果の内容・特徴 1. 属間交配によりコムギの3B染色体短腕を野生コムギ近縁種オオハマニンニク(Leymus racemosus) n染色体短腕に置き換えることで、コムギのBNI能強化が期待できる。(図1)
2. 多収国際コムギ品種”Munal”にオオハマニンニク由来のBNI能を導入した系統(BNI強化Munal)では、BNI能が親系統の根乾物1g、1日あたり92.7±12.1 ATU(アリルチオ尿素当量; 硝化抑制の程度を示す)から、181.7±12.1 ATUとなり、2倍程度に強化され、圃場での根圏土壌硝化菌数の抑制、硝化速度の低下、N2O排出量の低下(図2)で、環境負荷が低減される。
3. BNI能強化に伴い、コムギの窒素代謝が変化し、葉の硝酸量、硝酸還元酵素活性の低下(図3)や、グルタミン合成酵素活性の上昇など、アンモニア態窒素を活用する代謝が活発になる。さらに、低窒素施肥条件では、地力窒素からの窒素取り込み能が向上する。
4. “BNI強化Munal”と親系統のMunalを比較するとバイオマス生産量、子実収量、窒素吸収量は施肥量に関わらず、有意に高くなり、250 kg/haから100 kg/haに6割の窒素施肥量を削減しても子実収量(図4)、穀粒のタンパク質含量、製パン特性(図5)について有意差がない。
成果の活用面・留意点 1. 多収国際コムギ品種に導入されたオオハマニンニクn染色体短腕は、戻し交配により地域の特性に適合した品種へ導入することができ、BNI能を持つ品種を世界各地で育成できる。
2. BNI能を示すn染色体短腕には、野生コムギに由来する他の遺伝子も座乗することや、BNI能の発揮に土壌条件(pHなど)等の影響があることに留意が必要。
図表1 249153-1.png
図表2 249153-2.png
図表3 249153-3.png
図表4 249153-4.png
図表5 249153-5.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_a04
カテゴリ 肥料 遺伝資源 コスト 施肥 にんにく 品種

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