トウモロコシ根の生物的硝化抑制(BNI)物質の発見

タイトル トウモロコシ根の生物的硝化抑制(BNI)物質の発見
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2021~2025
研究担当者 大髙 潤之介
SUBBARAO Guntur Venkata 
小野 裕嗣
吉橋 忠 
発行年度 2021
要約 BNI活性を有するトウモロコシ根の表層の疎水性画分から、新規高活性BNI物質ゼアノンが見出されるとともに、HDMBOAとその類縁体、HMBOA及びHDMBOA-β-グルコシドが見出される。今回同定した4物質が、トウモロコシ根のBNI活性の重要な役割を担っている。
キーワード トウモロコシ 生物的硝化抑制 二次代謝物質 キノン類 ベンゾキサジノイド
背景・ねらい 近代農業では、工業生産されたアンモニア態窒素肥料が農地に多量投入され、土壌細菌により硝化されることで、温室効果ガス排出や水質汚染など、窒素損失に起因する様々な問題を引き起こしている。硝化をコントロールすることができれば作物の窒素利用効率を向上させるだけでなく、窒素肥料の損失と環境汚染を減らし、地球の窒素循環を改善することに繋がる。本研究では作物が根から物質を分泌し硝化を抑制する現象「生物学的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition=BNI)」に着目し、地球に優しく高効率なBNIを活用したトウモロコシ生産システムの確立に向け、トウモロコシ根由来の疎水性BNI物質の同定を行う。
成果の内容・特徴 1. トウモロコシの根表層をジクロロメタン(1%酢酸含有)で抽出することでBNI活性を持つ疎水性画分を得ることができ、BNI活性の強さを指標に、高速液体クロマトグラフィーによる疎水性画分の分離・精製により、BNI物質を単離できる。
2. 最も強力なBNI物質(ED50; 活性を50%抑制する実効濃度 = 2 μM)は、質量分析、核磁気共鳴装置による解析によりゼアノンと同定できる。本物質は自然界では初めての発見である(図1)。
3. 2番目に強力なBNI活性を示すベンゾキサジノイドの1種であるHDMBOA (ED50 = 13 μM)も同定できる(図1)。本物質はトウモロコシ根の表層疎水性画分の50%以上を占め、トウモロコシ根ではゼアノンと同様にBNIの発揮に重要な役割を持つことが推定される(表1)。さらに、根内部からBNI活性を示すHDMBOAの類縁体2種、HMBOAとHDMBOA-β-グルコシドも同定できる(図1、表1)。
4. トウモロコシ根の疎水性画分における主要なBNI活性は同定した4物質で説明できる(表1)。
5. 根内部に含まれるHDMBOA-β-グルコシドは、土壌微生物由来の糖分解酵素によって高いBNI活性を持つHDMBOAに変換される(図2)。
成果の活用面・留意点 1. 世界で栽培されるトウモロコシのBNI活性はブラキアリアや、BNI強化コムギに比べ低いが、BNI物質を指標にBNIを強化することが期待できる。(図1、表1、図2)
2. トウモロコシ生産システムにおけるBNIの活用に向け、親水性BNI物質を検討する必要があると共に、選抜育種での使用に耐えるスクリーニング手法を確立する必要がある。
図表1 249154-1.png
図表2 249154-2.png
図表3 249154-3.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_a05
カテゴリ 肥料 育種 とうもろこし

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