タイトル | BNI強化コムギによる窒素肥料由来温室効果ガス削減効果 |
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担当機関 | (国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 2021~2025 |
研究担当者 |
レオン 愛 SUBBARAO Guntur Venkata 松本 成夫 岸井 正浩 KRUSEMAN Gideon |
発行年度 | 2021 |
要約 | 開発済の土壌の硝化抑制率30%のBNI強化コムギにより、2030年までに施肥窒素量を11.7%削減、窒素利用効率を12.5%向上可能と試算される。さらに、土壌の硝化抑制率が40%に向上し、最適栽培地域に導入された場合、ライフサイクルアセスメントを用いた評価に基づくと、2050年までに世界のコムギ栽培地域から窒素肥料由来の温室効果ガスを9.5%削減可能と推定される。 |
キーワード | BNI強化コムギ 温室効果ガス 土壌の硝化抑制率 |
背景・ねらい | 国際農研では、作物が根から物質を分泌し、硝化を抑制する現象「BNI(Biological Nitrification Inhibition:生物的硝化抑制)」に着目し、環境負荷低減と食料増産を両立するBNIを使った「アンモニウムの活用」を提案している(Subbarao and Searchinger, 2021)。また、国際トウモロコシ・コムギ改良センター等と共同で、オオハマニンニクの高いBNI能をコムギに導入し、約30%の硝化抑制率を有し、少ない窒素肥料で高い生産性を示すBNI強化コムギの開発に成功し(Subbarao et al., 2021)、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、硝化抑制率40%を実現可能な目標として開発を進めている。 しかし、BNI強化コムギが普及した場合の環境負荷低減量はこれまでに予測されていない。ここでは、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用い、BNI強化コムギによる窒素肥料由来(図1、赤枠)の温室効果ガス削減を考慮しながら、コムギ生産の資材及び機械の製造から作物収穫までの各段階で発生する温室効果ガスの総排出量(図1、①②③の合計)をライフサイクル温室効果ガスとして評価する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 2030年までに土壌の硝化抑制率30%のBNI強化コムギが普及した場合(図2、横軸30%参照)、ライフサイクル温室効果ガス排出量は12.3%、施肥窒素量は11.7%それぞれ低減し、コムギの窒素利用効率は12.5%向上する。さらに、2050年までに硝化抑制率40%のBNI強化コムギが普及した場合、ライフサイクル温室効果ガス排出量は15.9%、施肥窒素量は15.0%それぞれ低減し、コムギの窒素利用効率は16.7%向上すると推定される(図2、横軸40%参照)。 2. BNI強化コムギは、弱酸性から中性の土壌(pH5.5~7.0)で、硝化抑制作用をよく発揮する。世界のコムギ生産面積の約3割がこの条件を満たしており、今後開発される硝化抑制率40%のBNI強化コムギを導入した場合、世界のコムギ栽培地域から窒素肥料由来の温室効果ガスを9.5%削減可能と推定される(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 気候変動の対策立案に関わる行政官は、本研究結果を用いて、BNI強化コムギの開発と普及を一つの有効な気候変動の緩和策として示すことができる。 2. 行政官などに、施肥窒素量削減と窒素利用効率向上が期待できる技術としてBNI強化コムギを示すことができる。 3. 硝化抑制作用は最適土壌pH(5.5~7.0)以外でも一定の効果が期待されることに留意する。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_a06 |
カテゴリ | 肥料 環境負荷低減 施肥 とうもろこし にんにく |