タイトル | ウイルスベクターを用いたキヌアの遺伝子機能解析法 |
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担当機関 | (国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 2016~2025 |
研究担当者 |
小賀田 拓也 豊島 真実 小田 千尋 小林 安文 藤井 健一朗 永利 友佳理 藤田 泰成 田中 孝二郎 水越 裕治 安井 康夫 吉川 信幸 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 有用な分子育種技術が開発されていないキヌアにおいて、ウイルスベクターを用いてキヌアの遺伝子発現を制御し、遺伝子機能を解析する技術を確立する。本手法はキヌアの新規遺伝子の同定や、分子育種素材の開発に利用できる。 |
キーワード | キヌア ウイルスベクター 遺伝子機能解析 分子育種 |
背景・ねらい | 南米アンデス原産のキヌアは、栄養バランスに優れているだけでなく、干ばつなどの過酷環境下でも栽培できることから、世界の食料・栄養問題の解決の切り札になり得る作物として期待されている。国際農研などの共同研究グループは、世界に先駆けてキヌアのゲノム配列情報を解読し(平成28年度国際農林水産業研究成果情報B03「キヌアの標準自殖系統とゲノム配列」)、キヌア系統の多様性を解明している(令和2年度国際農林水産業研究成果情報B08「キヌア自殖系統コレクションの多様性」)。これらの情報は、キヌアのゲノム情報を用いた育種研究に活用することができる。一方、キヌアでは遺伝子組換えなどの分子育種技術が開発されておらず、ゲノム配列より予測された遺伝子が実際にどのような機能を持っているかを調べる方法がなく、キヌアの分子育種を推進する上で大きな障壁となっている。そこで本研究では、ウイルスベクターを用いた方法によりキヌアの遺伝子発現を制御し、遺伝子機能を解析する技術を確立する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 植物ウイルスの一種であるリンゴ小球形潜在ウイルス(ALSV)を、キヌア植物体に遺伝子を運ぶベクターとして用いる。解析対象のキヌア遺伝子の配列をALSVベクターに組込み、キヌアに感染させると、ウイルス感染部位では対象遺伝子の発現量が制御される(図1)。 2. キヌアのカロテノイド生合成遺伝子CqPDS1の遺伝子配列断片を組込んだウイルスベクターを用いて、キヌアの中で本来発現しているCqPDS1遺伝子の発現を抑制できる(図2)。CqPDS1の遺伝子発現が抑制されたキヌアは、カロテノイドの蓄積量が減少することにより、葉で白化症状が誘導される(図3)。 3. キヌアのゲノム情報を用いて同定したベタレイン色素生合成に関与する酵素遺伝子の発現を、本手法を用いて抑制すると、キヌア植物中のベタレイン色素の蓄積量が減少する(図4)。 4. ALSVベクターを用いた本手法は、キヌアの遺伝的分類群(北部高地型、南部高地型および低地型)を代表する多くのキヌア系統で利用できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 遺伝子組換えなどの技術が確立されていないキヌアにおいて、本手法はキヌア植物体内の遺伝子発現量を制御するための有効な手段となる。公開されているキヌアのゲノム情報と組み合わせることで、新規遺伝子の同定や遺伝子機能の解析を推進できる。 2. 本手法は、キヌアの遺伝的分類群間あるいは系統間における遺伝子機能や表現型の比較といった解析に利用できる。 3. 本手法は一時的な遺伝子発現量の変化を誘導するものであり、育種素材の開発を加速化していくためには、さらにゲノム編集技術などの開発が求められる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b03 |
カテゴリ | 育種 植物ウイルス りんご |