イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法

タイトル イネのリン欠乏と低温不稔が問題となる栽培環境での効率的なリン施肥法
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2017~2022
研究担当者 辻本 泰弘
アウンゾー ウー 
西垣 智弘 
発行年度 2021
要約 リン欠乏土壌ではイネの出穂が遅延するため、生育後半に気温が低下する栽培環境では低温不稔が助長される。低温不稔のリスクが高い圃場にリンを施用することで、リン欠乏と低温不稔の双方の改善につながり、増収効果を高めることができる。
キーワード リン欠乏 出穂遅延 イネ 低温不稔 マダガスカル
背景・ねらい リンの施肥効率改善は、施用量が不足する地域での作物の生産性向上や枯渇するリン鉱石の持続的利用を実現する上で重要な課題である。熱帯地域に広く分布するリン欠乏土壌では、イネをはじめとする一年生作物の発育(出穂・開花)が遅延し、収穫までの日数が延びることが知られる。しかし、リン欠乏にともなう発育の変化が圃場での作物収量に及ぼす影響については定量的な評価がなされていない。本研究では、マダガスカル中央高地のリン欠乏水田において、リン施用の有無がイネの発育および収量に及ぼす影響を明らかにすることで、リン肥料を効率的にイネの増収に結びつけるための知見を得る。
成果の内容・特徴 1. マダガスカル中央高地のリン欠乏水田でイネ(マダガスカルの主力品種であるX265)を栽培すると、移植日に関わらず、リン施用区の到穂日数(移植から出穂までにかかる日数)がリン非施用区に比べて9~16日間短くなる(表1)。
2. リン施用による増収量は、同じ圃場でも移植日により有意に異なり、早植区が0.8 t ha-1、遅植区が1.2~1.3 t ha-1となる(表1)。
3. 遅植区では、リン非施用区における出穂日前後の日平均気温が22°C(籾の稔実に影響を及ぼさない下限温度)を大きく下回る日が観測される(図1)。
4. 遅植区では、リン非施用区の低温指数および不稔率が増加する(図2)。リンを施用して出穂を早めることで、低温不稔が改善される。早植区では、リン施用の有無による出穂日の変化が低温指数と不稔率に及ぼす影響は小さい。
成果の活用面・留意点 1. マダガスカルや東アフリカの熱帯高地では、リン欠乏と低温ストレスが問題となる栽培環境が多いことから、生育後半に気温が低下する場合に優先的にリンを施用するなど、イネの出穂を早めるリンの働きを活用することで、リンの施肥効率を高めることができる。
2. リン欠乏による発育の遅延は多くの一年生作物で観測されており、本成果で得られた知見は、イネ以外の作物への応用が期待できる。
3. リン欠乏によるイネの出穂遅延の程度は、品種によって異なることが観測されている。
図表1 249170-1.png
図表2 249170-2.png
図表3 249170-3.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_b11
カテゴリ 肥料 水田 施肥 品種

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